まず生きる楽しみ、その下に介護と医療がくっつく老人病院2017/12/24 07:25

 『週刊文春』12月21日号の「阿川佐和子のこの人に会いたい」が、高校の同 級生の大塚宣夫さんだと知らせてくれた人がいた。 大塚宣夫さんは、老人病 院の青梅慶友病院やよみうりランド慶友病院を運営していて、しばしば「等々 力短信」や「小人閑居日記」に登場してもらっている。

 さっそく、『週刊文春』を読む。 まったく知らなかったが、阿川佐和子さん の父、阿川弘之さんがよみうりランド慶友病院で最期を過ごしていたのだそう だ。 阿川弘之さんは、2012(平成24)年に家で頭を打って緊急入院し、そ こで誤嚥性肺炎を起こしたが、1か月後に奇跡的に回復した。 とはいえ、老 人夫婦だけで生活させるのは無理と判断して、騙し騙しよみうりランド慶友病 院に入院させたのだそうだ。 なにしろ「老人ホームなんて入ったら、自殺し てやる」と言っていた人間なので…。 でも慶友病院に入ったら、病院食が美 味しいうえに、特別にステーキやお寿司なんかも頼むことができるから、すっ かり気に入った。 ある日、鰻も頼めることを発見して、食べたいと言い出し た。 佐和子さんが、誤嚥性肺炎が治ったばかりだから、小骨が喉に引っかか りでもしたら大変なことになるんじゃないかと心配して、大塚先生に相談した。  にこやかに「いいんじゃないですか」と先生、「飲み込みに障害がある人でも、 好きなものは喉を通るんです」。 佐和子さんは、その名言に感動した。

 さらに驚くことに、病室でお酒を飲むこともオッケーなので、弘之さんの病 室は酒瓶だらけ、酒屋みたいになった。 大塚先生は言う、「人間、最後まで残 る欲と楽しみは食べることでしょう。その意欲もなくなったら、もう生きてい たいと思いますかね。そんなこともあって、うちの病院では、齢を取って病気 や障害で動けなくなったとしても、まず生きる楽しみがあり、その下に介護と 医療がくっついている。」 「多くの病院ではまず医療が先に来てますよね。す ると少しでも病気の治療にリスクがあると思われること、たとえば飲酒などは 一切禁止するところから事がスタートするわけです。」 「でもうちの病院では、 生活や楽しみを前面に出しているので、あらゆることが原則自由。入院する前 に生活していたときと同じことをここに持ち込んでいただいて結構ですよと。 そのうえでなにか問題が起きたときのために、我々医者をはじめスタッフがい るという考え方ですね。」

 まず普段と変わらぬ暮らしが優先される、「同じ理由で食器や家具調度品も、 施設っぽいものでなく家庭的な雰囲気が感じられるものを選んでいます。また、 入院されている方を十把ひとからげに扱うんじゃなくて、一人ひとりの希望に 合った生活の形をつくることは常に考えていますね。このほか、家族との絆を 極力太く保つように、面会は二十四時間いつでも可能。家族の方による食事の 持ち込みももちろんオーケーです。」

 阿川佐和子さんは、父上の病室ですき焼きをやった、それをエッセーに書い たという。

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