桂小南の「菜刀息子」後半2018/01/05 07:23

 (熊五郎が仏壇を拝む) 熊さん、有難うございます。 早いもんで、もう 一年で。 たった一人の若旦那を…、どうぞ気を落さないように。 あれから 何の便りもなくて、評判の売卜(ばいぼく)、街頭の占いにも、みてもらいまし たが。 思いつめて、大川に身を投げたに違いない。 親思いの優しい子でし たよ。 気をしっかりお持ちになって。 熊さんは親切で、ドロップという西 洋の飴を、横浜あたりで贅沢をして…。 仏壇の花がきれいでしょう、花屋の 娘さんが持って来てくれて、本当の供養になります。

 彼岸の中日、観音様へお参りに行くか、羽織を出しな。 ゴーーン、時限の 鐘。 (三味線が入って)名代の唐辛子、胡麻、陳皮、罌粟(けし)、青のり、 麻の実、山椒入り、七色唐辛子! 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。  江戸前の押し鮨はいかが! お茶屋で休ませてもらおう。 お父っつあん、く たびれましたね。 以前は、道の十町や二十町は平気だったんだが。 お茶が 来ましたよ。 いい色に出ている。 色の割には味がないお茶だな。 本堂の 裏に乞食が沢山いましたね、ちょっと施しをして来ます。 只やるんじゃない ぞ、何か芸をさせろ、芸を買ってやるんだ、大きな声で言わせなさい。

 右や左の旦那様、チーーン! 父が死んで、母は長らく患いまして。 順番 にあげるから、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ。 地べたに座ってないで、何か敷い たらいいのに。 こんな小さな子供まで…、サア、あげるよ。 ハイ、ハイ、 ハイ、ハイ、これでみんなかい、もらってない人はいないか。 お前さんは、 まだ、手を出しな、気が弱いんだね。 アッ!!

 お父っつあん、シシシシシ、シュンゾウが、イイイイイ、イキテイマス! 馬 鹿、生きていたか。 一年の間、親の脛を齧らずに、生きていたか。 どこか に座っているのか。 座っています、本堂の裏に。 婆さん、人違いだ、帰ろ う、帰ろう。 行きやしません、帰りゃあしません、自分の腹を痛めた子は分 かる。 婆さん、罰が当たるぞ、お前さんが甘やかして、あのザマにしたんだ。  もう一苦労させて、私らが死んだ後も生活できるようにしたい、私の言ってい ることは間違っているか。 へぇ、帰りましょう。 姐さん、みたらし団子を 10本、餅もくれ。 お父っつあん、何をしてるんです、日が暮れて来ましたよ。  婆さん、餅と団子だ、あの乞食にやって来てくれないか。 さっきも言ったよ うに、只やるんじゃないぞ、何か芸をさせろ、芸を買ってやるんだ、大きな声 で言わせてやんなよ。

 お薦(こも)さん、施しです。 いいですか、あそこの旦那に聞こえるよう に、はっきりと、そう言いなさい。 ナガタン誂えまして(ながなが患いまし て)、難渋しておりまーーす!!

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