盟主○○○と「他見を憚る」理由2018/02/06 07:19

 ドラマ『龍馬 最後の30日』は、脚本・相沢友子、坂本龍馬(新井浩文)、
福井へ同行する土佐藩士・岡本健三郎(伊藤淳史)、松平春嶽(筒井道隆)、中
根雪江(苅谷俊介)、永井尚志(宇梶剛士)。

 坂本龍馬が、この時期に書いた自筆の「新政府綱領八策」と呼ばれる文書が、
国立国会図書館と下関市立長府博物館に2枚現存している。
第一義 天下有名ノ人材ヲ相致シ顧問ニ供フ
第二義 有財ノ諸侯ヲ撰用シ朝廷ノ官爵ヲ賜イ現今有名無実ノ官ヲ除ク
第三義 外国ノ交際ヲ議ス
第四義 律令ヲ撰シ新タニ無窮ノ大典ヲ定ム律令既ニ定レバ諸侯伯皆此ヲ奉ジ
テ部下ヲ率ス
第五義 上下議政所
第六義 海陸軍局
第七義 親兵
第八義 皇国今日ノ金銀物価ヲ外国ト平均ス

右預メ二三ノ明眼士ト議定シ諸侯会盟ノ日ヲ待ツテ云云
○○○自ラ盟主ト為リ此ヲ以テ朝廷ニ奉リ始テ天下萬民ニ公布云云
強抗非礼公議ニ違フ者ハ断然征討ス権門貴族モ貸借スル事ナシ

  慶應丁卯十一月 坂本直柔(なおなり)

 ドラマでは、この盟主○○○は松平春嶽だという大胆な仮説を取り、坂本龍
馬がその説得のために、福井に行く。 春嶽に会い、春嶽が持っていた「ビラ
スビイデ独行車」という自転車の前身に乗ってみたりするのだ。 盟主話には
中根雪江が消極的で、春嶽は即答しない。 龍馬は、徳川慶喜の側近で大政奉
還を推進した永井尚志には盟主○○○を徳川慶喜で話していたらしく、諸侯会
議で突然松平春嶽を提案するつもりだったようだ。 ドラマは、龍馬暗殺の黒
幕に、永井尚志を暗示しているように見えた。 龍馬が暗殺された後、問題の
龍馬の手紙を見せた中根雪江に、松平春嶽は「自分も暗殺者の一人だった」と
嘆き、中根は手紙を「他見を憚るもの也」と封印するのだ。

 この手紙が発見された昨年1月17日の福井新聞の報道では、福井市立郷土
歴史博物館の角鹿尚計館長は、幕府上層部が暗殺に関与したとみていて、中根
雪江は永井尚志周辺が指示したと考え、暗殺直前の手紙に自分の名前が書かれ
ていることから、嫌疑が及ぶことを恐れ、封印したのではと、推測している。 
高知県が1月13日に発表した時、解説した京都国立博物館の宮川禎一上席研
究員は、三岡八郎が上京して新政府に出仕するのは1か月も先の12月半ばの
ことで、この間のタイムラグにはさまざまな理由が考えられるが、福井藩内に
三岡八郎の新政府出仕に反対するもの(中根も含まれるか)の存在が推察され
るために「他見を憚る」とした可能性が考えられる(とくに三岡八郎に知られ
るのは良くないはず)と言っている。

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