「似我(じが)」と「似我の功徳」2018/03/03 07:18

 質問された件だが、「似我の主義」という言葉も聞いたことがなく、私にはま ったくわからなかった。 「似我(じが)」を『広辞苑』第七版も入った、手元 の電子辞書で引いても、出てこない。 「似我蜂(じがばち)」という言葉はあ る。 図書館で大きな辞書を引いてみることにした。 その結果は、下に書く が、古くから「似我」という言葉や、仏教に「似我の功徳」という教えがあっ たことはわかった。 ただ福沢がそれを知っていて「似我の主義」に、使った かどうかはわからない。 「道徳の教授法は似我の主義に存す」は、『福翁自伝』 の有名な一節、「東洋の儒教主義と西洋の文明主義と比較して見るに、東洋にな きものは、有形に於て数理学と、無形に於て独立心と、この二点である。」を思 い出させる。

『日本国語大辞典』第二版、第六巻(小学館・2001年)。

じが【似我】

「じがばち(似我蜂)」の略。*名語記(1275)六「似我也。われ にによとさすといへる義あり」*運歩色葉(1548)「似蛾 ジガ」*日葡辞書 (1603-04)「Iigaua(ジガワ)ノキニ スヲ カクル」*慶長見聞集(1614)一 〇「似我と云虫有、件の虫は蜂の一類なり」

 じがの功徳(くどく)

(似我蜂が他の幼虫を自分の巣に入れ似我似我といい きかせて育てるとその幼虫は蜂になるといわれていたところから)道理を意識 しないで一心に念じると、この功徳で自然とその道理を体得できること。*随 筆・驢鞍橋(1660)中、仏語には、仏の万徳円満の心付てある故に、誦する者 に天然と功徳備る也。是を似我(ジガ)の功徳と云。似我蜂と云者、葉虫を子 とし、似我類、似我類とさせば、功積て天然と蜂となる也」

『故事・俗信 ことわざ大辞典』(小学館・1982年、1983年8刷)

じが[似我]

似我の功徳(くどく)((「似我」は、似我蜂の略。似我蜂が他の幼虫を自分の 巣に入れ、似我似我といいきかせて育てると蜂にかわるといわれていたところ から))道理を意識しないで一心に念じると、その功徳によって自然と道理が会 得できることのたとえにいう。「仏語には、仏の万徳円満の心付てある故に、誦 する者に天然と功徳備る也。是を似我(ジガ)の功徳と云。似我蜂と云者、葉 虫を子とし、似我類、似我類とさせば、功積て天然と蜂となる也。如レ是道理は 知らねども、経咒を誦すれば天然と仏心に近付く」[随・驢鞍橋‐中]