柳亭市弥の「粗忽の釘」2018/03/05 08:08

 2月28日は、第596回の落語研究会だった。

「粗忽の釘」         柳亭 市弥

「黄金の大黒」  志ん八改メ 古今亭 志ん五

「干物箱」          五街道 雲助

         仲入

「花筏」           柳家 喬太郎

「抜け雀」          柳家 さん喬

市弥は市馬の弟子、2012年12月に二ッ目に昇進し市也から市弥になった時、 「元犬」を聴いた。 垂れ目の市弥、落語研究会は二回目だが、緊張すると始 めた。 噺家11年目、二ッ目は5年目になるけれど、お前、大丈夫かと思わ れる。 お客様に助けられる。 地方へ行って、「真田小僧」を演ったが、まっ たく受けない、ちょうどこういう状態。 突然、一番前のお爺さんが立ち上が って、千円札を一枚手渡してくれた。 パニックになって、「お父っつあんから、 小遣いもらったよ!」と演ったら、そこだけは受けた。 あとで、そのお爺さ んにお礼を言ったら、「ああでもしないと、盛り上がらないからな」と。(黒の 羽織を脱いで、薄い空色の着物に)

そそっかしい人に、悪い人はいないと申します。 悪だくみをしても、忘れ てしまう。 お前さん、煙草を吸う前に、頼みがある、ホウキが寝ているだろ う、壁に釘を一本打っておくれ。 一服させてくれよ。 やること、しおおせ てからにしなさい。 手前でやれ。 あんた、大工だろう、やさしく言ってい るうちに、やった方がいいよ。 打つよ、打つよ。 長い釘じゃなきゃあだめ だよ。 お前、亭主の仕事に口出すのか。 大きな蜘蛛だな、お仕置きだ。 ト トトントン、アッ痛ェ、よりによって一番痛え所を打っちゃった。 どこに打 ったの。 壁に八寸の瓦ッ釘を打ち込んだ。 長屋の壁は薄いんだよ、隣に釘 が出てるよ、早く行って謝っておいで。 お前が行け。 男が行かなきゃあ駄 目なんだよ、あんた、男だろ。 男だよ。 何だと思ってんだ、男をバカにし やがって…、こんちは!

出てきませんでしょうか。 薮から棒だね。 いや、壁から釘で。 壁に釘 を打ち込んじゃったんだけど、出てませんか。 でもね、わからないことが一 つあってね……、お前、空家はお向うだったよな。 あんた、お向かいの家だ から、ウチは大丈夫。 必ず出てるんだ、見て下さい。 ウチは見なくても大 丈夫。 親切に言ってるんだ、今見てもらえると有難い。 あんた、後ろを見 てご覧、後ろの路地を突き抜けて来るような長い釘はない。 素人だからわか らないけれど、八寸の瓦ッ釘だよ。 後ろ、後ろ、路地を見て、あんた、だい ぶそそっかしいな。 サヨナラ。

これが、ウチか。 前の家へ行っちゃったよ、落ち着くために煙草喫むんだ。  落ち着いて、隣へ勝負だ。 ごめんなさいよ。 いらっしゃい。 どなたさま、 今、家の人呼びますから。 あなたですか、隣に越してきたのは、「遠くの親戚 より近くの他人」と言いますから、親類同様にお付き合いをさせてもらいます。  一服つけさせてもらいます、落ち着かないとね。 上がってきたよ。 ちょっ と伺いますが、さっきのはおかみさんですか、いい女だなあと思ってね。 家 のです。 時にお宅が一緒になったのは、仲人がいてですか、くっつき合いで すか。 仲人がいてだけれど。 そりゃあいい、あたしん所は、くっつき合い でね、かみさんは表の伊勢屋の行儀見習い、あたしは大工で行っていて、弁当 つかうと、あたしにだけお茶やコウコはどうかとか、がんもどきうまく煮えた のよ、とかもってきてね。 それで一緒に縁日へ行って、帯留め買ってやった ら、たいそう喜んでね、着物の袖をひっぱりあって、八ツ口に手を入れて、コ チョコチョとやったりしてね、ここじゃなんだからって、竹林で…、強引ね、 なんてね、そういうことがありました。 世帯を持ったが、湯銭がないから、 大家にタライ借りて、タライで行水、二人で入って、背中に石鹸を挟んで、調 子を合わせて上ったり下がったりする、あなたがプッ! わたしがピッ! なん てね。 ♪あなたがくれた帯留めの達磨の模様が気にかかる、さんざ遊んで転 がして、あなたがプッ! わたしがピッ! ネェートンコトンコ。 師匠(市馬) が歌うから、弟子も歌う。

あんた、何をしに来たんで。 壁から釘が出ていませんか、蜘蛛の巣の下あ たりに。 どの辺か、わからない。 じゃあ、ウチへ戻って。 隣の野郎、よ くしゃべる野郎でね。 ここですよ、ここ、指差してるところ。 見えないよ。  お仏壇がガタガタしてる。 (拝んで)おい大変だ、阿弥陀様のノドのところ から、ビュッと出ている、えらいことをしてくれた。 また、来ました、一瞥 以来で。 お仏壇を見て下さい。 はせがわ?……、新しい形のお仏壇ですか。  あそこに、釘が出ているんですよ。 ホーーッ。 感心していないで、どうす るんだ、大変だよ。 ええ、明日から掃除のたびに、ここにホウキをかけに来 なきゃあならない。

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