その斬新さに驚いた福沢女性論・入門2018/03/30 07:14

 22日の当日記にも、NHK・Eテレ『先人たちの底力 知恵泉(ちえいず)』 から、小室正紀慶應義塾大学名誉教授の「福沢はけして諦めず、フェミニズム の本を何度も出した。 女性の自立、男尊女卑の否定は、彼の生涯の目標だっ た。」という言葉を引いた。 私は、福沢諭吉の女性論があの時代に、なぜあれ ほど斬新だったのかと、ずっと不思議に思って来た。 そのヒントになる講演 を、24日に福澤諭吉協会の土曜セミナーで聴いた。 安西敏三甲南大学名誉教 授の「福沢におけるJ.S.ミル問題―実学・功利・自由―」である。

 甲南大学といえば、講演でもお話の出た伊藤正雄甲南大学教授の著書、高校 生の私をいっぺんに福沢好きにした『福沢諭吉入門 その言葉と解説』(毎日新 聞社・昭和33(1958)年)から話を始めなければならない。 私はその本の、 第十六章 「女性の解放―男女平等論と一夫一婦論―」で見出し語になっている、 福沢の言葉の数々にびっくり仰天したのだった。

 「たれか孟子の妄言を信ぜん」、「男ひとりに妾八人もまた不都合ならん」、「日 本の婦人は責任なくして、苦楽もまた小なり」、「新婚の新家族は、新苗字を創 造すべし」、「妻に対して敬意なかるべからず」、「大礼服を脱して、裸体の醜を あらはすに等し」、「離婚の頻繁なる原因は、男女交際の道なきにあり」、「婦人 愛情の機を圧迫して恬然(てんぜん)たるは、学者の罪なり」、「家内の交はり は、天然の真に従はんことを欲す」、「結婚の後両親と別居するは、これに離れ ざるの法なり」、「夫の不品行を責むるは、嫉妬にあらず」、「父も小児の養育に 助力すべし」、「法律経済の知識は、文明女子の懐剣なり」、「古文古歌の風流は、 台所の実際に利用すべからず」、「婦人も戸外の経営に注意するを要す」。

 一例を挙げれば、「たれか孟子の妄言を信ぜん」。 明治7年『学問のすゝめ』 8編にある。 「世に生まるる男女の数は同様なる理あり。………一夫にて二 三の婦人をめとるは、もとより天理にそむくこと明白なり。これを禽獣といふ も妨げなし。………ある人またいはく、「妾を養ふは、後(のち=あとつぎ)あ らしめんためなり。孟子の教へに、不孝に三あり。後なきを大なりとす」(孟子、 離婁上編)と。余答へていはく、天理にもとる(さからう)ことを唱ふる者は、 孟子にても孔子にても遠慮に及ばず、これを罪人といふて可なり。妻をめとり 子を生まざればとて、これを大不孝とは何事ぞ。遁辞(言いのがれ)といふも あまりはなはだしからずや。いやしくも人心をそなへたる者なれば、たれか孟 子の妄言(でたらめ)を信ぜん。」とある。

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