白井さゆり教授の講演、日銀の金融緩和政策2018/08/07 07:15

 5月15日、今年の福澤先生ウェーランド経済書講述記念日の講演会は、白井 さゆり総合政策学部教授の「日本銀行・元審議委員からみた金融緩和の光と影」 だった。 シンガポールから帰ったばかりという赤いスーツの白井さゆり教授、 エネルギッシュな圧倒的な講演だった。 『三田評論』7月号に、グラフ入り の講演録がある。 白井さゆりさんは、2011年から2016年まで日銀の審議委 員を務め、白川方明総裁と2年、黒田東彦総裁と3年、金融政策に携わった。 

日銀は2013年1月に政府との共同声明で2%のインフレ目標(物価安定目 標)を掲げ、その実現のために2013年4月から「異次元緩和」と言われる大 胆な金融緩和を実施することになった。 重要なポイントは三つ、まず2013 年4月、大量の国債と上場株式投信(ETF: Exchange Traded Fund)などの買 入れを始めた。 ETFとは、日経平均株価やTOPIXと呼ばれる株価指標や株 式指数に基づいて投資を行うもので、日銀が直接銘柄を選んで買い入れるので はなく、間接的に株式を買うもの。 この国債・ETFの買入れなどを増やしな がら、2016年1月にマイナス金利の導入を発表している。 これは、いわゆる 翌日物などの銀行間で貸借する金利(超短期金利)をマイナスに下げる政策で ある。 さらに2016年9月、10年物国債の利回りという長期金利を0%に安 定させる政策も打ち出した。

 なぜ日銀がこのような異例の金融緩和を行ったのか。 その第一の目的は、 デフレからの脱却だ。 物価の持続的下落から脱却し、物価上昇率の年2%と いう物価安定目標を達成すること、さらにそのもとで経済成長を実現しようと いうのが、本来の金融緩和の目的だった。 そのために、短期・長期の金利を 引き下げ、株式や不動産などの資産価格を引き上げようとしたのだ。 同時に、 市場や家計の物価に対する期待をデフレマインドからインフレマインドに変え ようとした。

 また第二の目的として、リスク投資の促進が挙げられる。 2013年4月まで の日本では、家計は資産の多くを現金と預金で持ち、多くの企業も収益を現預 金で保有し、金融機関も集めた預金の多くを安全資産である国債で運用してい た。 つまり、誰もリスクを取らない。 しかし、リスクを取らないところに 新しい経済活動はなかなか生まれない。 そこで、家計・企業・金融機関がそ れぞれリスクを取りやすくすることで、経済を活発にしようと考えたのだった。

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