柳亭市楽の「真田小僧」2018/08/25 07:12

 22日は、第602回落語研究会。 立秋を過ぎたとはいえ、文字通り残暑の日 だった。

「真田小僧」     柳亭 市楽

「安兵衛狐」     隅田川 馬石

「禁酒番屋」     三遊亭 歌武蔵

        仲入

「笠碁」       古今亭 文菊

「たちぎれ線香」   桂 米團治

 柳亭市楽は、平成17年3月早稲田大学教育学部社会科を卒業、すぐ市馬に 入門して市朗、平成20年11月二ッ目に昇進して市楽となった。 市楽になっ た後で「やかん」、平成27年8月に「四段目」を聴き「なかなかの出来」と書 いていた。 市馬に入門して、まだ前座にもならない見習いの頃、師匠の両親 が大分から出て来た。 師匠が、これが弟子の市朗と紹介すると、お母さんが 倅が世話になってまして、と挨拶した。 師匠は、弟子だから、世話をしてい るのは自分だ、と。 お母さんは世話になってるんだろう、泰幸、お前は掃除、 洗濯なんか、からきし出来ないのに、と親子喧嘩になった。 私が「持ちつ持 たれつで」と言ったので、三月(みつき)は師匠に口を利いてもらえなかった。

 金坊が火鉢の火を熾す(父親は煙草を喫う)。 お父っつあん、ふたりでお茶 飲もう。 何言ってんだ、外で遊んで来い。 行きやすいようにしておくれ。  何だ? お小遣いおくれ。 さっき、やったろう。 もうない、明日の分、貸 して。 明日はどうする。 明後日の分…、その次の日の分、お父っつあん、 馬鹿だから、その内に判んなくなっちゃう。 小遣い、やらないよ。 いいお 父っつあんだ、生まれ変わっても、お父っつあんの子になりたい、来世の分を おくれ。 駄目だ。 いいよ、おっ母さんに貰ってくるよ。 無駄だ、やるな、 と言ってある。

 お父っつあんは、つくづく甘い男だ、こないだお父っつあんが出かけた日、 おっ母さんのところへ、男の人が訪ねてきた話、聞きたくないかい。 寄席に 行ったことがあるけど、先にお金を取るだろ。 小三治独演会でも、先にお金 を取る。 お終いまで、ずうーーっと聴いていたけれど、マクラしかやらなか った。 それでも先にお金を取る。 わかったよ! 声は大きいけど、1銭か、 じゃあ1銭分だけ。

 お父っつあんの留守に来た男の人は、帽子に眼鏡で、白い服を着て、ステッ キをついていた。 おっ母さんが、うちのカボチャ野郎は留守だからって。 あ たいは、カボチャというより、ジャガイモだと思う。 おっ母さんが、その人 の手を取って、お上がりなさいと、座敷に引っ張り上げた。 それからどうし た。 これから先は、2銭。 2銭で、楽になりなよ、お父っつあん。

 ここで、おっ母さんが5銭くれたから、外に遊びに行った。 馬鹿!お前、 何のために生れて来たんだ。 だけど、すぐ戻って来た、ぬかりはない。 障 子に穴を開けて、覗いた。 ここからは、3銭。 3銭、めっきり、こっきり、 これっきりだ。 蒲団が敷いてあった、おっ母さんが襦袢一枚になって、男の 人が肩やなんかさわるんだ。 アラーッ、気持いいわーッ、って。 お前、そ いつの面を見たか? 見た、お父っつあんも知ってる人。 知ってる野郎か。  横丁の按摩さんが、肩を揉んで行った。

 只今帰りました。 金坊に金を持って行かれた、お前の話で。 この話、聞 きたいか、まず1銭出せ。 お前さん、金坊は頭がいいって近所で評判だよ、 知恵じゃあ、あの子にかなわないんだから。 悪知恵だ、頭がいいってのは、 こういうのだ、講釈の中の真田三代記だ。 天正10年、天目山の戦いで武田 勝頼が討ち死にした時、真田昌幸が数千で数万の軍勢に囲まれた、13歳の次男 与三郎(のちの真田幸村)が、父上、永楽通宝の旗印を許し給えと申し出た。  永楽通宝、六連銭(りくれんせん)の旗印は敵の一方、松田尾張守の旗印、そ れを使って、大道寺駿河守勢に夜討をかけ、敵の同士討ちをさそい、無事信州 上田に逃げ帰ることが出来た。 真田はこれを記念して、のちに自らの定紋を 二つ雁が音から、永楽通宝の六連銭にしたという。 真田幸村は、大坂夏の陣 で討死と見せかけて、薩摩に落ちのびた。 寄席に何日も通って憶えた。

 金坊、お金はどうした? 使っちゃった、講釈を聞いてきた。 真田三代記、 天正10年、天目山の戦いで武田勝頼が討ち死にした時、……(と、そっくり 終りまでやる)。 お前、今の話、聞いてたな。 お父っつあん、定紋って、何?  家の紋だ。 うちにも紋があるの? ケンカタバミだ。 永楽通宝の六連銭は、 どう並べるの? こうだ、ヒーフーミーヨーイツムー。 ヒーフーミーヨーイ ツムーか(と、かっさらう)。 どこへ行く。 焼き芋を買って食うんだ。 う ちの真田も薩摩に落ちたか。

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