「爪紅」とは鳳仙花(「“花”をひろう」)2018/09/23 07:54

 高橋睦郎さんの「“花”をひろう」、「彼岸花」の前の週は「爪紅(つまぐれ)」 で、ここにも北原白秋の第二詩集『思ひ出』が出てくる。 北原白秋の第一詩 集は明治42年24歳で世に問うた『邪宗門』だけれど、言葉の魔術師としての 白秋の本領は、むしろ2年後26歳時刊行の第二詩集『思ひ出』だという。

 『思ひ出』には、洎芙藍(さふらん)、薊(あざみ)、鶏頭、椎(しい)の花、 水ヒヤシンス、石竹、白粉花、椿、たんぽぽ、沈丁花、かきつばた、牡丹…… など、さまざまな花が登場するが、中に二度出てくるものに「爪紅」があると いう。 その一つ、題名もズバリ「爪紅」の四行詩。

 いさかひしたるその日より

 爪紅の花さきにけり、

 TINKA ONGOの指さきに

 さびしと夏のにじむべく。

 「TINKA ONGO」は、「小さき令嬢。柳河語。」とあるそうだ。 つまぐれ、 つまぐれない、紅色の花弁をとって揉んで爪の上に乗せ、繃帯などで縛って半 日も置くと、爪に花弁の色が滲み着いて、爪が伸び切るまではそのままなこと から言い慣わした俗称で、正式名称は鳳仙花(ほうせんか)。

 楕円形の果実は五室に分かれていて、熟すると表皮が縦に割れて巻き縮み、 種子を勢いよく弾き出す。 その種子が翌年芽を出すので、播かないのに増え る。 魚骨がのどに刺さった時、この種子を数粒飲めば抜けるから、「骨抜き」 という別名があるそうだが、私は、これを知らなかった。

降り足らぬ砂地の雨や鳳仙花     杉田久女

かそけくも喉鳴る妹よ鳳仙花     富田木歩

鳳仙花いまをはぜよとかがみよる   太田鴻村

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