柳家ほたるの「祇園祭」2018/10/01 07:26

 28日は、第603回の落語研究会だった。 昼間は少し暑くなった日だったが、 帰りなどは、ちょうどよい爽やかな夜になった。

「祇園祭」      柳家 ほたる

「厩火事」      入船亭 扇蔵

「ラーメン屋」    桂 文治

        仲入

「へっつい幽霊」   瀧川 鯉昇

「盃の殿様」     柳亭 市馬

 ツルツル頭の柳家ほたる、ホテルではない、と出て、師匠の権太楼に入門の お願いをしたのが、ここの楽屋だった。 鈴本に行ったら、次は落語研究会だ からと言われて、来た。 守衛さんに話したら、あの恐い師匠に入門するのか、 と。 高座を見るとニコニコしていて「タスケテ、クダサーーイ!」。 守衛さ んは、演芸場で修学旅行に説教して、落語やらないで帰っちゃったことがあっ たと言う。 「セイネンガッピ!」の師匠ですよ。 入門したら、本当に恐か った。 落語研究会に出られるのは嬉しい、二ッ目以来。 フジテレビの真夜 中やTBSの明け方に出てるが、あとはボーーッと過ごしている、お元気ですか (と、羽織脱いで、空色の着物に)。 パンダの赤ちゃんは、白地に黒か、黒地 に白か、わからないので、上野動物園に電話して聞いた。 うちは、お蔭様で 黒字です。

 江戸っ子の三人組、京の河原町で「おやま買い」、はんなりと出迎えられて、 朝から晩まで「女郎買い」、居続けて路銀がなくなり、往き大名帰り乞食、二人 は江戸へ帰って、兄貴分だけはおじさんの所に厄介になる。 祇園祭を梅村屋 の二階から見物することになったが、おじさんが来られなくなって、おじさん の友達と酒を酌み交わす。 そこで、間違いが起こる。

 一杯いきまひょ。 べたつくような酒だ。 京の伏見の酒、水がいい、日本 一。 京は王城の地、日本一の土地柄だ、カッ、カッ、カッ、カッ、カ!  シ ーーンと、静かな町、大坂の商人はやかましい。 わてな、若い頃、江戸に下 ったことがある、ごみごみと汚い、人はチョカチョカしとる、軒先の犬がババ こきよる。 むさい国の、ヘド。 カッ、カッ、カッ、カッ、カ! おい、お っさん、少し気を付けて口を利いてもらいてえ。 はいはい、江戸は今日この 頃、開けた所、京は日本の中心、天子様の住む古い町だ。 こないだの火事と いえば、応仁の乱。 東夷(あずまえびす)の田舎者。 日本一は、桃太郎の きび団子だ。 江戸っ子は、目の下一尺の鯛のいいところだけ食い、あとは犬 にくれてやるんだ。 京は、風に吹かれて、屁をこいてるんだろう。

 祇園祭の御旅所、立派でっしゃろ、祇園囃子は上品、「コンコン、コンチキコ ンチキチン、ヒュルーリヒュールリ、トッピッピ」。 何言ってやがんでえ、江 戸の神田囃子、威勢がいい、ショウデンてえのは将軍様の昇殿なんだ、「テンテ ン、テンドド、チャンチキチ、テレツクテンツクテンツク、スケテンテン、オ ヒャーリ、トロトロ、トンガラカッタ、ピィー、ピィーヒャラ、ドンドン、チ ャンチャン、ヤードッコイ、ピィーーッ」とくらあ。 騒がしい囃子だな、祇 園囃子は上品に、上品に、神輿もヤッサヤ、ヤッサヤ。 江戸の神輿は、ワッ ショイ、ワッショイ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラッ!

にいさん、御所見物はどうや、天子様の住んでる所、紫宸殿のお砂を握ると 瘧(おこり)が落ちる。 べら坊め、徳川様の千代田の名城、大手の砂利をつ かんで見ろ。 首が落ちらァ。

入船亭扇蔵の「厩火事」2018/10/02 07:25

 扇蔵、扇遊の弟子、眉が濃い、草色の着物に、茶の羽織。 落語研究会の前 座は、緊張したという。 (囃子が鳴らない内に)無言でめくり、座布団を返 す。 客席の緊迫感も伝わり、袖で小三治師匠が何か言うのが聞こえる(と、 羽織を脱ぐ)。 前座にはルールがある、座布団は縫目のない方を客席に向ける、 縁の切れ目のないように。 私は、そう思う。 けれど、(客席を見て)そうは 見えない。 変わったのが、北海道と九州が結ばれたりする夫婦の縁。 祖父 母の頃は、お見合い結婚、その昔は許嫁(いいなずけ)が幼い時に決まってい たりした、さらに昔は旧暦の十月十日、出雲に神様が集まって決めた神在祭、 神在月、出雲以外は神無月、神社にお参りに行く時は確認して行った方がいい。  19歳の提灯屋の娘がいるんだが、22歳の蝋燭屋の倅と結びましょう。 三本 余ったけど、結んじゃいましょう。 これが三角関係になる。

 お崎さん、また夫婦喧嘩か、喧嘩っていうと家に来る。 夜なべの仕事が二 つあって、夕飯をあの人に言いつけた。 その言い方がいけない、髪結でお前 が稼いでいるからって。 姉弟子が指を怪我して、代わりに伺ったお店で、お かみさんと、芝居見物に行くお嬢さんの、これが癖っ毛で口やかましい。 晩 くなりましたって帰った。 どこで遊んでるんだ、夜しか一緒に食えないから 待っていたんだ。 遊んでないよ、誰の稼ぎで暮してるんだ。 おかめ! ひ ょっとこ! 般若! 外道! と、喧嘩になった、今日という今日は、別れさ せて頂こうと思って。

 お前の亭主はかばえない。 こないだ、前を通った。 上がったら、お膳を 片付けたんだが、お刺身と、酒が一本。 これが気に入らない、お前が仕事に 出ているんだ、飲むなら、お前が帰ってから、二人で飲んだらいいじゃないか。  それを昼日中から飲んでいて。 お別れ、お別れ、別れなさい。 何も家の人 を悪くいうことはないじゃないですか、刺身の一人前に酒の一本ぐらい。 あ たしの方が七つ上で、患ったりして、若い女を引っ張り込んでも、こっちは歯 が抜けて土手ばかりになって、噛みついても、土手じゃあ噛めやしない。 共 白髪まで添い遂げてくれるのか、八年添っても、その料簡がわからないのが、 心配で。

 お崎さん、モロコシの孔子を知ってるか。 大好き、香ばしいのが。 トウ モロコシじゃない。 孔子という学者。 役者? 幸四郎の弟子か何か。 学者 だよ、郡部に住んで都に通う、二頭の馬を飼っていて、特に白馬を愛した。 家 の人も好きです。 ドブロクじゃない。 ところが留守に火事になった、名馬 ほど火を恐れる。 厩から引き出そうとしたが、駄目だった。 孔子が帰って、 家来一同、怪我はなかったか? それはよかった。 馬のことは、一言も言わ なかった。 一事が万事、家来たちは、こういう主のためなら、命を投げ打っ ても、と思った。 

 一方、麹町にさる旦那がいた。 面白いのね、猿が旦那なんですか。 名前 を言えないから、さる旦那、瀬戸物に凝っている。 家の人と同じ、2円80銭 でヒビの入った皿を買ってきた。 そんなんじゃない、一枚で何千円、何万円 という皿だ。 そんな大きな皿があるんですか。 珍客がお見えになって、そ れを出した。 犬のお客ですか。 珍客、珍しい客だ。 のべつ来るのは、ワ ン客。 奥様が皿を持って、階段を二階から下まで、ダダダダダと落ちた。 旦 那が、皿は大丈夫か、皿は大丈夫か、皿は大丈夫か…、と三十六ぺん言った。  気を付けてくれなければ困る。 翌朝、奥様はいなくなった。 実家から、ご 離縁を、と言って来た。

 凝っていると、他は目に入らなくなる。 亭主が一番大切にしている瀬戸物 を割ってごらん。 私の身体を聞いてくれると思うんですが、モロコシか、麹 町のさるか。 試してごらん。 まず詫びて、台所の揚げ板をずらして。 試 すことはよくないが、一生のことだ、やってごらん。

 ただいま、お前さん。 遅いな、飯の支度をして待っていた、晩ぐらい一緒 に食いたいじゃないか。 お前さん、モロコシだね。 何を言ってるんだ、駄 目だ、その戸棚は。 アッ、駄目だ、その皿は。 ほらみろ、言わんこっちゃ ない、手に入らねえ皿、割ったじゃないか。 大丈夫か、指でも怪我でもした んじゃないか? 聞いてんだよ。 引っくり返って、泣いてんじゃないよ。 エ ーーーッ、よかった、よかった、よかった、お前さんが麹町のサルだったら、 どうしようかと思った。 モロコシだったよ。 何言ってるんだ、怪我はない か。 お前さん、私の身体を気遣ってくれたんだね。 当り前だよ、お前に怪 我でもされてみろ、明日から遊んでて、酒が飲めねえ。

桂文治の「ラーメン屋」前半2018/10/03 07:27

 黒紋付きの文治、大分から出て来て33年、中卒で落語家になりたかった。  大分はNHKとTBSしかなくて、「お好み演芸会」で師匠の伸治を見た。 ち ょうど大分に公演に来た師匠に、入門を頼むと、せめて高校ぐらい出ないと、 辞めた時に困ると言われた。 大分県立四日市高校、五千本の指に入る学校、 卒業前の三者面談で、初めて落語家になりたいと言った。 親は大学を出て、 町役場に勤める、不自由のない暮しを望んだ。 担任の化学の先生が親切で、 何か伝手はあるのかと聞いてくれた。 「笑点カレンダー」の発売元に問い合 わせて、文治(当時は伸治)師匠の住所を持っていた。 東久留米、大分から 近い所と同じ、二週間ばかり居て見ろ、となった。 何かやってみろ、と言わ れて、オチケンでやっていた「子ほめ」をやった。 誰のだ? 小朝か、半分 素人だ。 「よーよー」なんて言わない、職人は幇間じゃない。 テープに 録音してきた。 冬休みのことで、春休みに親を連れて来い、さよなら。 両 親と伺うと、三月、本牧亭で俺の会がある、前座をやれ、四年間は帰れないぞ、 池袋までご両親を送って行け。 母が山手線の中で号泣したと、二ッ目になっ た時に、聞いた。

 年寄夫婦がやってるラーメン屋。 婆さん、もう一時を回ったよ、仕舞いに するか。 子供がいないから、孫がいるわけない。 もう、子供は駄目だね。  幾つだと思っているんです、子が出来たら世間の笑い者、練馬のドンファンと 呼ばれる。 ピカソは70過ぎて子が出来た。 お爺さんは、頭がビカソ。 子 供は授かり物だから。

 おじさん、ラーメン一つ。 支那そば、いい匂いだ。 お待ちどう様。 お 客さん、幾つぐらいかね。 23、4かな。 お爺さんに似てますよ、ゲジゲジ 眉毛に金壺眼、唇がベロンとしていて、息のつき方も似てる。 旨い、夢中で やっちゃったよ、もう一杯。 人情を持って商売をしているから、盛りをよく している。 旨えラーメンだったな。 もう一杯位は、いけるんじゃないです か。 もらおうか、昼飯を食っていなかったんだ。 忙しかったのか、お金が なかったのか。 お爺さん、お爺さん、内緒話、チャーシューをおまけ。 首 回りが太い。 ラクビー選手じゃない。 もう一杯。

 このへんに交番はあるかな。 俺を、そこへ突き出してくんねえ。 無銭飲 食だ、三杯の勘定だ。 ご商売は? これと決まってない、実は父母の顏もわ からない、中三で育ての親の所を飛び出した。 探すと、実のお袋はガンで死 んでた、親父は立派な家に住んでいたが、家族がいて、今さら出て来てもらっ ても困ると、本当の親父に泣かれた。 それで、真面目に働くのが嫌になった んだ。 若いのに、ご苦労なさったんですね。 じゃあ、行きますかね。

桂文治の「ラーメン屋」後半2018/10/04 07:15

 婆さん、後ろ押してんのか、ぶら下がってんのか、重いよ。 その屋台、俺 が引っ張ってやるよ。 よかったね、家の前まで行けば、助かる。 いつから、 ラーメン屋をやってるの。 工場を定年になってからだから、15、6年。 婆 さんと一緒になって40年になるけれど、子供のかけらもない。 夜の7時か ら1時半まで出てる。 お金、少しは残る。 ここの家だ。 婆さん、お茶の 支度を。 どうぞ、どうぞ、四畳半に六畳、あばら家だけれど。 酒、コップ に入れて。 あなた、いける口でしょ。 交番へ行かなきゃ。 交番やコンビ ニは一晩中やってる。 帰ってから、一杯やるのが楽しい。 屋台引っ張って もらった運賃、千円か二千円、ラーメン三杯とトントン、チャラになる。 自 分は泊まる所がない。 ウチに泊まりませんか。 人の情けを受けたことがな い。 婆さん、交番へ行くのが嫌になっちゃった、売り上げを茶箪笥の上に置 いときな。 俺に、持ってけっていうのかい。

 私も一つだけ頼みがある。 一度でいいから「お父っつあん」と呼んでもら いたい。 一度だけ呼んでくれ、初めて同士だ。 お金の世の中だ、手数料、 千円。 お金を持たせて帰そうっていうのか。 ここに千円ある、日本語でい い。 俺、出来るかなあ。 アッ、ハン、オトッ! 駄目だ、駄目だ、おじさ ん、目をつぶってやってもいいか。 「お父っつあん!」 はい、今度は私の 番、二千円で、私に甘えるように「おっ母さん」て。 「おっ母さん!」 な ーーんだい。 はい、どうぞ。 涙が出るよ、いい心持のもんだね。 今度は 俺の番、三千円出す。 名前を呼ぶから……、そうだ名前を聞いてなかった。  昇で。 昇! なんだい、お父っつあん! アーーア、三千円じゃ安い。 も う一ぺん、やってくれ。

 次は私の番、三千円と228円と福引券をあげる。 小言をいいます、目を開 けてお願い。 夕方、どこをほっつきまわっているのか、なかなか帰って来な いで。 車にぶつかったのか、知らない人に連れて行かれたのか、心配で、心 配で、昇!  おっ母さん! アーア、アーア、いい気持、五千円出すから、 一晩中やりましょう。 やだ、やだ、婆さんに目を開けてやって、俺にもやっ てくれ。 お父っつあん、もうラーメン屋やめてくれ、明日から俺がやるって、 言ってくれ。 昇、お前の気持はありがたいが、嫁もいる、子供におもちゃの 一つも買ってやらなきゃならないだろう。 大好きなラーメン屋、俺にやらせ てくれ。 昇! 婆さん、今夜は楽しかったな、この方のおかげだ。 また遊 びに来てくださいな、有難う。

 こんな金なんか、要らねえ(と、手で払う)。 俺の話を聞いてくれ。 明日 から、仕事を探す、これからも親子として付き合ってもらいてえ。 これから は、俺のお父っつあん、おっ母さんだ。 嬉しいこと、言ってくれますね。 親 子として、細く、長く、付き合っていきましょうよ。 私は、ラーメン屋だ。

(なお、私は2008年10月22日の第484回落語研究会で聴いた五街道雲助の「夜鷹そば屋」を、<小人閑居日記 2008. 10.27.>に書いていた。)

瀧川鯉昇の「へっつい幽霊」前半2018/10/05 07:09

 陽気の変わり目に、付いて行けなくなって50年。 子供の時からで。 体 を鍛えるという気が全くない。 中学三年ぐらいの時は、プールが楽しみで、 友達が集まった。 朝起きて、すぐ海水パンツを穿いて、出かける。 友達は プールで着替える。 お前は? 穿いて来たから、いい。 それは便利だと、 みんな穿いて来るようになった。 われわれは、ハイテク世代の先駆け。

 この、力の抜けた状態が、落語芸術協会、芸協。 前川さん、と言ってもご 存知ないでしょうが贔屓の人で、十日の興行に、九日は聴きに来る。 ハハハ ハと笑う声が聞こえる、毎日同じ所で笑う。 暮に電車で会ったんで聞いたら、 一晩寝ると物を忘れるんだとか、落語協会は眠くなる、全員上手過ぎる。 そ の点、芸協はいい、と両者の特徴を如実に。 協会は、これでもか、これでも かで、時間を忘れる、涙が出る。 芸協は、エッ、終わったの、となる。 今 日もそんなところで。 「へっつい」というのがどんな物かは、協会に聞いて 下さい。

 へっつい、3円でよろしゅうございます。 3円、安過ぎだよ、いくらか負 からないかい。 3円にならないか。 ですから、3円でございます。 運び 賃がかかる、家の土間に据えて3円ということだ。 わかりました、お買い物 がお上手で、すぐお届けいたします。 道具屋が大八車に積んで届け、土間に 据えた。

夜中の2時ごろ、バタバタ走る音がして、戸をドンドン叩く。 道具屋ーッ、 道具屋ーッ、へっついを引き取ってもらいたい、訳を聞かずに。 受ける時は 半値という決まりでして、1円50銭になりますが、よろしゅうございますか。  すぐ取りに来てくれ。 すぐは参れません、朝イチで伺います。 じゃあ、俺 はダチの所で一晩厄介になるよ。 朝、引き取って来て、店に出しておくと、 すぐ買い手がつく。 夜中の2時ごろになると、引き取ってくれと、言って来 る。 毎日売れて、毎晩、毎晩、道具屋ーッ、道具屋ーッ、それが続いて、 大変な儲けだ。

 ある日は、大阪弁の男、半値で引き取ると言うと、エーーッ、なんとかなら んか。 なぜこのへっついを返すのか、お話をして頂ければ、3円で。 夜中 の2時の鐘がゴーンと鳴ると、へっついの角から青白い炎があがり、痩せこけ た男が現れて、金出せ、金出せ、と。 幽霊の追剥は初めて。 すぐ引き取っ て、今すぐ。 明日朝イチで。 お友達の所にでも、いらっしゃったら。 友 達、おらへん、ここに泊まる。 私と家内が寝る布団一つしかない。 わい、 お前のカカと寝る、お前がわいの家で寝ろ。 柏餅でもよろしい。 よろしゅ うございません。

 そうこうする内に、へっついが売れなくなり、ほかの道具も売れなくなった。  大変だ、湯屋で噂を聞いて来た、あのへっついから幽太が出る、家にある道具 はみんな出るって。 へっつい、どっかにうっちゃっちゃうか、誰かにもらっ てもらったらどうか、1円つけて、苦情は一切受け付けない事にして。

 裏の塀越し、遊び人の熊が雪隠に入っていて、これを聞いた。 なに1円つ けるって、アッ、紙が落ちた、ここまで運が付かなくてもいいか。 ちょいと、 そこ行く若旦那、紙をくれませんか。 遊びが過ぎて勘当された、同じ長屋の 御大家の若旦那だ。 小遣い稼ぎに一口乗りませんか。 表の道具屋で、へっ ついもらってくるんだ。 二人で一円、一人五十銭。 熊さん、あれが出るん だろ。 へっつい、ぶっこわして、木は薪に、土は路地に撒けばいい。

 いい人に聞いてもらった。 熊さんが…。 いいけれど、近すぎるな。 け して苦情は持ち込みません、わっしと若旦那で、担いで行きます。 縄をかけ て下さい、天秤棒は後で返します。