桂文治の「ラーメン屋」前半2018/10/03 07:27

 黒紋付きの文治、大分から出て来て33年、中卒で落語家になりたかった。  大分はNHKとTBSしかなくて、「お好み演芸会」で師匠の伸治を見た。 ち ょうど大分に公演に来た師匠に、入門を頼むと、せめて高校ぐらい出ないと、 辞めた時に困ると言われた。 大分県立四日市高校、五千本の指に入る学校、 卒業前の三者面談で、初めて落語家になりたいと言った。 親は大学を出て、 町役場に勤める、不自由のない暮しを望んだ。 担任の化学の先生が親切で、 何か伝手はあるのかと聞いてくれた。 「笑点カレンダー」の発売元に問い合 わせて、文治(当時は伸治)師匠の住所を持っていた。 東久留米、大分から 近い所と同じ、二週間ばかり居て見ろ、となった。 何かやってみろ、と言わ れて、オチケンでやっていた「子ほめ」をやった。 誰のだ? 小朝か、半分 素人だ。 「よーよー」なんて言わない、職人は幇間じゃない。 テープに 録音してきた。 冬休みのことで、春休みに親を連れて来い、さよなら。 両 親と伺うと、三月、本牧亭で俺の会がある、前座をやれ、四年間は帰れないぞ、 池袋までご両親を送って行け。 母が山手線の中で号泣したと、二ッ目になっ た時に、聞いた。

 年寄夫婦がやってるラーメン屋。 婆さん、もう一時を回ったよ、仕舞いに するか。 子供がいないから、孫がいるわけない。 もう、子供は駄目だね。  幾つだと思っているんです、子が出来たら世間の笑い者、練馬のドンファンと 呼ばれる。 ピカソは70過ぎて子が出来た。 お爺さんは、頭がビカソ。 子 供は授かり物だから。

 おじさん、ラーメン一つ。 支那そば、いい匂いだ。 お待ちどう様。 お 客さん、幾つぐらいかね。 23、4かな。 お爺さんに似てますよ、ゲジゲジ 眉毛に金壺眼、唇がベロンとしていて、息のつき方も似てる。 旨い、夢中で やっちゃったよ、もう一杯。 人情を持って商売をしているから、盛りをよく している。 旨えラーメンだったな。 もう一杯位は、いけるんじゃないです か。 もらおうか、昼飯を食っていなかったんだ。 忙しかったのか、お金が なかったのか。 お爺さん、お爺さん、内緒話、チャーシューをおまけ。 首 回りが太い。 ラクビー選手じゃない。 もう一杯。

 このへんに交番はあるかな。 俺を、そこへ突き出してくんねえ。 無銭飲 食だ、三杯の勘定だ。 ご商売は? これと決まってない、実は父母の顏もわ からない、中三で育ての親の所を飛び出した。 探すと、実のお袋はガンで死 んでた、親父は立派な家に住んでいたが、家族がいて、今さら出て来てもらっ ても困ると、本当の親父に泣かれた。 それで、真面目に働くのが嫌になった んだ。 若いのに、ご苦労なさったんですね。 じゃあ、行きますかね。