「龍馬暗殺」薩摩西郷黒幕説“神話”に引きずられすぎ2018/10/23 07:10

10月16日の朝日新聞連載コラム「呉座勇一の歴史家雑記」は、「「龍馬神話」 引きずられすぎ?」だった。 今年は明治維新150年、近年呉座さんが気にな るのは、明治維新の中心勢力である薩摩藩・長州藩をことさらに貶(おとし) める書籍が目につくことだという。 それらの書籍は、日本史学界は薩長を称 賛し美化する「薩長史観」に陥っている、と激しく批判している、と。

 呉座さんは、書く。 「古典的な幕末維新史が、勝者である薩長の視点で叙 述されていたことは事実である。だが、そうした見方を百八十度ひっくり返し て、薩長が悪で幕府や会津藩が善であると説くのも極論である。現在の日本史 学界では、どちらが正義だったかという善悪二元論を退け、薩長と幕府・会津 をなるべく中立公正に評価しようと努めている。」

 呉座さんはさらに、薩長を悪玉とみなす人は、薩長が種々の陰謀をたくらん だという「陰謀論」をしばしば唱えるとして、特に有名な、「坂本龍馬暗殺の黒 幕は薩摩藩(あるいは西郷隆盛)」という陰謀論について、幕末維新史を専門と する学界の研究者で、薩摩藩黒幕説を支持する人は皆無である、と断言する。

 その陰謀論は、武力倒幕を目指す薩摩藩にとって、大政奉還など平和路線を 推進する坂本龍馬は邪魔者だったというのだが、それは“龍馬神話”に引きず られすぎだというのだ。 脱藩浪士である龍馬の政治力には限界があり、小松 帯刀や後藤象二郎の奔走で大政奉還は実現した、とする。 呉座さんは、通説 を覆すと豪語する陰謀論こそが、昔ながらの“神話”に囚われているのだ、と 指摘している。

 大河ドラマ『西郷どん』第35回「戦の鬼」では、坂本龍馬(小栗旬)が暗 殺された直後、お龍(水川あさみ)が薩摩屋敷に押し掛けて泣きわめき、西郷 吉之助(鈴木亮平)に「あんたが殺した!」と抗議し、この「瓦版」にも書い てある、と叫んでいた。 当時の「瓦版」に、早くも「陰謀論」が出ていたの であろうか。