鈴々舎馬るこの「大安売り」2018/12/05 06:26

 空色の着物に、クリーム色の羽織。 何月になっても暑い、この体型なので。  それをあまり口にしない、噺家は季節感が大事だから。 家では、カミサンが 暖房をつけ、俺がTシャツでかき氷を食ってる。

 寄席でお婆さんの団体が入ってて、携帯が鳴ったが、止め方がわからない。  ハンドバッグの上に、のしかかっている。 いろいろな所で演るが、葬祭場で 友引寄席というのがあった。 終わって、ご近所の方から花束贈呈となったが、 司会の男性がいつも葬儀の司会をしている社員で、(出棺の時の陰気な調子で) 「これより、馬るこさんに、花束贈呈でございます。」

 馬風一門は、どんどん食えという方針で、入門から30キロ太った。 馬風 部屋、食べるだけ食べて、飲むだけ飲んで、稽古しないで、寝る。 店屋物を 取る、かつ丼の大盛、よろしいでしょうかと言うと、師匠が喜ぶ。 おかみさ んが、カロリーが高いから、親子丼の大盛にしなさい、と。 理不尽に耐えな ければならない。 おかみさんは、絶対。 韓国ドラマに洗脳されていて、見 ている時は返事もしない、なりきっている、オモニ、あーーん。 おかみさん の誕生日に、韓国語でハッピーバースデーを歌う、DVDで憶えて、♪センチュ カン ハムニダ シュール イボニ ハムニダ。 おかみさん、涙ポロポロ。  お前は落語がうまくなるよ。 あれから15年。

 噺家は、相撲と違って、陥落することがない、どんなにつまらない人でも陥 落しない。 相撲のぶつかり稽古を体験した、100mダッシュを何本もやった よう。 鼻血が出て、口から頭蓋骨が飛び出す。 <お相撲さんにはどこ見て 惚れた稽古帰りの乱れ髪> 昔は、一場所十日、江戸で十日、上方で十日、一 年を二十日で暮すいい男。

 海苔の佃煮のような真っ黒い顔の山本山、上方で、親方衆、ご贔屓のお情け で土俵に上がった。 初日、無我夢中、目から火花の出る張り手バチバチ、叩 き込まれて血まみれ。 二日目、猫だましで、後ろから回しを取ったが、一本 背負いで負けた。 三日目、巨漢が出て来て、四十五日で負けた、一突き半で 負けた。 四日目、元銀行員でガリガリに痩せた相手、引き落としで負け。 五 日目、元居酒屋に、突き出された。 六日目、幼稚園の先生、送り出された。  七日目、両手両足包帯ぐるぐるの相手、情けをかけて、骨折の足を蹴ったら、 親指で目を突かれたのが、額に当たって複雑骨折で負け。 八日目、礼儀知ら ずの相手で、スマホをピーと鳴らすから、ビール瓶で殴って、カラオケのリモ コンで殴ったら、反則負け。 とんでもないことをしたと、翌朝謝りに行った ら、親方と車で出かけて、謝れなかったら、相手の親方が辞めた。 九日目、 泣き落とし、お袋が女手一つで育ててくれて、弟が八人、北国の寒い所だった と、腰砕けで負けた。 十日目、両脇の下にくさやの干物をすり込んで立つ、 四つに組むと相手が倒れ込んで、同体。 行司の差し違えで、惜しくも負けた。

 何だ、全部負けたんじゃないか。 いいえ、向こうが勝ったり、こっちが負 けたりで。 次の場所には、名前を変えようと思う。 大安売り。 こうなっ た以上、誰にでも負けます。

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