柳家花緑の「柳田格之進」前半2018/12/09 07:50

 柳家花緑、本日トリを取りますと始め、テレビで発達障害の番組に出たが、 落語家なのに私は識字障害だと明かす。 文字の読み書きの学習に困難がある、 脳半分が関係しているらしい。 秘伝を書けない、口伝はない、落語のノート は取りましたが…。 よかったなあ、どこでどうなるかわからない、識字障害 だと四年前に知った。 自信を回復した、人生わからない。 以前、(落語の) 「平林」をやった、自分のプロフィールみたいな話、私がやってよかった。 う まくやってない状態で、何かいいことがある。 与太郎も、知らない内に、福 を引き寄せているところがある。

 江州彦根藩の家臣柳田格之進、正直真面目なのを煙たがれ、上役の讒言でお 役御免となり、浅草阿部川町の長屋で、娘のお絹と貧乏暮しをしている。 気 晴らしに出かけた材木町の碁会所で、心が前向きになる。 相手があるからよ い、浅草馬道の質屋萬屋源兵衛と互いに気が合う。 末永く、相手をしたい、 家にいらっしゃいませんか、となった。

 立派なお宅、十畳の離れで、碁を打つ。 柳田様、一献差し上げたい。 そ れは困る、帰る。 何と立派なお方だ。 行くんじゃなかった、気が弱ってい るから、呼ばれると、つい出かけてしまう。 萬屋から、米俵、沢庵、梅干が 届く。 そこまでして下さるか、源兵衛殿の優しさだ、生涯、友でいたい。

 八月十五日、月見の晩、お嬢様もと誘われたが、着て行く着物がなく、柳田 一人で行く。 月が白の碁石に見える。 離れで碁を打つことになる。 一番 勝って、一番負ける。

 先ほどの五十両、いかがしますか。 小梅の水戸様からの五十両でございま す。 離れにあるだろう。 ございません、もう探す所がないんでございます。  碁を打っていらっしゃる時、お渡しして、旦那様は膝の上にお乗せになりまし た。 ことによると、それが転がって、柳田様がお持ちになった……。 番頭、 そんなことをする人じゃない、何を言うか、馬鹿なことを言うな。 たった一 人の友だ、立派な人だ。 思わず知らず、お持ちになるということもあり、つ い出来心ということもあります。 それなら、それでよい、差し上げるんだ、 私の小遣いに付けといてくれ。 それでいいだろ、番頭。

 翌朝。 ごめん下さい。 萬屋のご支配、徳兵衛殿か。 昨夜、碁をお打ち になりました。 あの折、旦那に渡した五十両が無くなりました。 もしや柳 田様がご存知ではないかと思って、伺いました。 煙草入と勘違いしたとか。  これからお上に届けますので、お尋ねがあるかも知れません、ご容赦下さい。  奉行に届けるのか。 その五十両、わしが出そう、そこに居合わせたのが身の 不運である。 明日の昼に取りに来てくれ。

 一通の手紙を認める。 絹、これを番町の叔母さんの所へ届けてもらいたい、 そして一晩、泊めてもらえ。 絹から父上にお願いでございます、腹をお召し になることはおやめください。 ご主君、柳田の家名に傷がつく。 父上、絹 と親子の縁をお切り下さい、私が吉原へ出向き五十両の金を作ります。 萬屋 源兵衛と番頭徳兵衛、両名を斬って、武士道をお立て下さい。

 長屋の女衒が、吉原の半蔵松葉に世話して、あっという間に五十両。 絹、 許してくれ。 友が出来たと思い、浮足立っておった、許してくれ。