林家たけ平の「小田原相撲」前半2018/12/28 07:17

 客も十人十色でして、さっき外で、着物着たまんま人を待っていたら、おば さんが寄って来て、私、落語詳しいのよ、あなた着物着て聴きに来るなんて、 粋ねえって言われた。 そのおばさん、この中にいる。 もう、見つけました けれど。 寄席の一番前の真ん中で、10歳の坊やが一人、聴いていた。 後で 何しに来たのって、訊いたら、「息抜き」。 10歳で「息抜き」しなきゃあなら ない何かがあるんだ。 忙しいのは、北千住にいるんですが、老人会がそっち こっちに出来ている、老人会青年部なんてのもある。 千人くらい入るホール で、一番後ろのお婆さんが、耳に手を当てて聴いている。 聞こえますか? 聞 こえてるよ、去年の人よりよかった。 去年も、私ですよ。

 大相撲、好きな方が多いと思いますが、国技というけれど、モンゴルの方が 強い。 それでも国技、両国でやる(パラパラと拍手)。 拍手の練習をしまし ょう、稽古は大切。 これ、泡が出るね。 それ炭酸ですが。 ソーダ!(大 きな拍手) やれば出来るじゃないですか。

 アンケートです、手を挙げて下さい。 大相撲で、青春時代に誰が贔屓でし たか? 千代の富士、三重ノ海の人? 若貴兄弟の人? 北の湖、輪島の人?  柏戸、大鵬の人? 若乃花、栃錦の人? 残りは、双葉山?  

四代目横綱、谷風梶之助、仙台出身、「わしが国さで見せたいものは、むかし ゃ谷風、今、伊達模様」と謡われた。 温厚で怒ったことが無い人だったとい われる。 怒ったことのない人、いますか? 今、手を挙げた人、私は信用で きないけれど…。 だから、怒らないって、言っているんだろ!! その谷風 が、一度だけ怒ったことがある。 下田の漁師上がりで、今いうセミプロ、大 巌(おおいわ)大五郎が、強くて仕方ない。 気に食わないと、回しを取って、 ぶん投げて三人、人を殺めた。 「谷風やなんか、江戸で取るのはいいが、あ いつら俺が怖くて箱根の山を越えられないっていうじゃないか」、と酒が言わせ る高調子。 谷風が怒って、小田原に本職の相撲がやってくることになった。  今風の兄ちゃんや、前のおばさんみたいな下っ端が、小田原まで、つづら(明荷)を担いで行く。 砂袋、金槌なんていう四股名、名前は大事で、柳家、三 遊亭はいいけれど、「林家」は…。 笑う所じゃない。 小田原、今なら新幹線 で34、5分、平成生れの人は新幹線がなかったのを知らない、小田急線しかな かったんですか、なんて言う。

小田原に、相撲ファンが集結した。 ファンとマニアは違う。 マニアは、 勝負審判を見て、興奮する。 水戸泉、昨日と違う腕時計をしている、とか。  林家の噺を聴かないのが、マニア。 人が沢山集まったから、旅館が泊めてく れない。 三人だから、何だか。 二間に百五十人様、廊下に三十人、はばか りに三人、天井に三人ぶら下がっている。 (手の先を曲げ)屋根の鬼瓦につ かまって、寝てもらうんなら、どうぞ。