林家たけ平の「小田原相撲」後半2018/12/29 07:22

初日、五丈三尺の櫓太鼓が鳴り、会場は満員。 大巌大五郎、東前頭筆頭、 対、鯱(しゃちほこ)清五郎。 鯱は、頭突きが得意で、おでこが出ていて、 雨が降っても、目に入らない。 仕切りで、目と目を合わせるが、制限時間無 し、二時間で立った。 大巌、鯱の頭突きをかわすと、回しをつかんで、投げ 飛ばす。 沼津の海にブクブク沈んで、いまだにわからない、と相撲協会が発 表した。

 二日目。 谷風梶之助の所に、漁師のおかみさんと倅がやって来た。 主人 が昨年の奉納相撲で、大巌に蹴殺された。 倅の又太郎が、おっちゃん、お父 っつあんの仇を取ってくれ、家の鶏が産んだ卵五十だ、と差し出す。 襖越し に、後に名を残す雷電がこれを聞いていた。 まずは、弟子の雷電が取ること になった。 卵五十を割って、グッと飲んだ。 いいキミだ。 受けなかった けれど、家の近所のおじさんに「小田原相撲」を演ると言ったら、これをやっ てごらんと言われた。

 行司は大変だ。 職業病で、家に帰っても、あの調子。 ただいま! ご飯、 食べないの? 残った、残った! 大巌に雷電! 大巌に雷電! みんな雷 電!雷電!の応援、一人だけ大巌! だが、死んでしまえ、と言われて、雷電! 

 立ち上がって、雷電がバンザイした。 二本差されちゃったぞ。 いいの、 手だよ。 臭いんだよ、脇の下が。 昔から、大衆(体臭)は相撲の味方だ。  大巌、ラッキーとガブリ寄り。 あと一歩のところで、又太郎の声、おっちゃ ん、ただ下がっているだけか! 雷電が、二本の腕をグッと下げた、閂(かん ぬき)だ。 ボキッ、ボキッ、二回、鈍い音がした。 さらに、生意気な、と 顔を張る(後に雷電の禁じ手になった張り手、八角を張ったら三角になった)。  張られた大巌は、彼方へ飛んで行った。 大歓声、いろんなものが飛んで来る。  ご祝儀も(落語家にも、たまにある)。 小田原一のケチが、羽織を放った。 後 で、紐で手繰り寄せた。

 林家たけ平、とうとう終りまで、羽織を脱ぐのを忘れていた、熱演であった。