柳家小せんの「金明竹」前半2019/01/02 07:28

 どうか一つ、と小せん、ワッと笑っても、それっきり、笑わなくても、それ っきりだ、と。 ボーーーッと生きてる人物は、やりやすい。 愚かしいとこ ろのある、いわゆる馬鹿、四十八種類ある。 食い気の馬鹿、底抜けの馬鹿、 兄弟の馬鹿など。 兄ちゃん、一年はお正月を入れて、十三か月だよね。 馬 鹿、十四か月だ、お盆が抜けてらあ。 家族揃っての馬鹿。 お雛様と、鯉幟 は、どっちが先? 兄弟でもめていると、お父っつあんが、馬鹿、来年の事が 今からわかるか。 こういう家は、必ず町内に一軒はある。 ないな、と思う 人は、自分の所だ。

 松公に、親類の道具屋のおじさんが苦労する。 猫のヒゲを抜くんじゃない、 表の掃除をしろ。 水を撒け、向こうに回って、そうっと撒くんだ。 ほら、 みろ。 相済みません、手前どもの小僧でして。 二階の掃除をしろ。 何を 持って行くんだ。 水を撒くんだろ。 掃除はいい、店番をしろ、奥で調べ物 をしているから、誰か来たら、必ずおじさんに知らせるんだぞ。

 急な雨だ、駆け出していくよ。 ごめん下さい、ちょっと軒を貸して下さい。  傘を貸してやろうか、立て掛けてある傘を。 こんな、いい傘、よろしいんで、 お借りします。 誰か来たな。 そこにあった傘を貸してやった。 蛇の目の か、おじさんが一度使っただけの、一番いい傘だぞ。 どこの方に貸した。 知 らない人。 傘にも断わりようがある、家にも貸し傘は沢山あったんですが、 この長湿気(ながじけ)で、骨と皮がバラバラになったので、焚き付けにした、 と言うんだ。 誰か来たら、必ずおじさんに知らせるんだぞ。

 雨が上がってきた。 松っちゃん、鼠が出たので、猫貸してくれ。 家にも 猫はいましたが、この長湿気で、骨と皮がバラバラになったので、焚き付けに しました。 松っちゃんは、変わってんな。 誰か来たな。 お向うの相模屋 さん、猫を借りに来たで、教わったように、こう断わった。 猫には猫の断わ りようがある、最近盛りがついて家に寄り付かない、どこかで海老の尻尾を食 ってきて、家の中で粗相をして困る、マタタビをなめさせて、奥に寝かせてあ ると、言うんだ。 誰か来たら、必ずおじさんに知らせるんだぞ。 何べんも、 何べんも、言うけれど。

 よく人が来るな。 旦那は、おいででしょうか、隣町の讃岐屋ですが、いら っしゃったら、ちょっとお顔をお借りしたい。 旦那ですか、最近盛りがつい て家に寄り付かない、どこかで海老の尻尾を食ってきて、家の中で粗相をして 困る、マタタビをなめさせて、奥に寝かせてある。 えっ、主人共々、改めて お見舞いに参ります。 また誰か来たな。 隣町の讃岐屋さんが、旦那の顏を 借りに来たんで、あたい、ちゃんとこれこれと断わった。

 えらいことになった、私はすぐ讃岐屋さんに行って来ます、お前、店を見て てくれ。 私は縫物の仕事がある、松っちゃん、誰か来たら、必ずおばさんに 声をかけるのよ。

 また、人が来た。

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