橘家圓太郎の「火焔太鼓」前半2019/01/28 07:09

 世の中、若い者向けのものばかりになって、こんな(落語研究会のような) 中高年向けのものはない。 私は質屋の倅なので、中古品に抵抗がない。 し かし、金さえあればの世の中になっている。 ZOZOタウンのお兄ちゃんを見 て、子供までが金がすべてだと思ってしまう。 城北のランドマーク、東武百 貨店に、小さな女の子が買物に来て、下赤塚あたりから…、「お金払ってますよ、 客ですよ」って店員に言っていた。 こういうことを、ちゃんと教えるのには、 寄席が一番。 金を払っても、笑えるかどうか、わからない。

 お前さんは商売が下手、こないだも客に、この箪笥はうちに十三年あります、 抽斗、引けますよ、ただ引こうとして生爪を剥がして血だらけになった客がい るって言った。 去年の暮、お向うの米屋に長火鉢を売った。 人間がついて きて、米屋の旦那が長火鉢と甚兵衛さんを一緒に買ったようなものだと言って いた。 誰のおかげで、飯を食っていると思っているんだ、ん、ん……この話 はよそう。 市で何を買って来た? ん……。 口は横に裂けている、もっと 裂こうか。 てぇーこ(太鼓)、いいてぇーこ。 見せなさいよ。 店に出した ら、見ろ。 見せなさいよ、優しく言っている内に、出した方がいいよ。 こ んな汚い太鼓に、いくら出した? もう、いいよ。 ベロ抜くよ。 二分。 一 両の半分、大金だよ、生きてんの、嫌になっちゃった、もう寝るよ、売れるま で寝てるよ。

 貞! 大丈夫か、叔父さん、連戦連敗だね。 旦那と呼べ、兄貴から預かっ たんだが。 わかったよ、叔父さん。 やるか、来るかって、派手な喧嘩にな るけど、いつも叔父さんが謝っちゃう。 所帯を持ったら、わかる。  表で太鼓のほこりを叩きな。 ドンドンドン、ドンドンドン。 お前の玩具 を買ってきたんじゃないよ。 よく響く、叩くと、ドーーーン! ドーーーン!  ドンドンドン。

 許せよ。 太鼓を打ったのは、その方の店だな。 あの小僧が打ちました、 馬鹿でして、馬鹿目をしておりましょう、図体ばかり大きくてなりましたが、 八つで。 お上が、お通りになって、見たいとおっしゃっている。 あの子供 が打ちましてね、よく働くんで、今年十一になります。 最前、八つと、申し たが…。 すぐにお屋敷に持って参ります。

 おっかあ、どうだい、太鼓が売れたじゃないか。 お屋敷は掃除が行き届い ているんだよ、あんな汚い太鼓を持っていったら、殿様が蕁麻疹になって、道 具屋を生かして帰すなってことになる。 縄でぐるぐる巻きにふんじばって、 お屋敷には大きな松の木がある、その松の木にぶら下げられて、ほったらかし にされるんだ。 いい干物が出来上がるよ。 ノミ、シラミ、ダニ、アリが集 まってきて、肉団子の干物みたいになっちゃう、それをカラスが待っていて、 眼玉をくりぬいてね。 雷がビシーーッと落ちて、真っ黒焦げになる、行っと いで!

 貞! お前が行って来い。 嫌でございます、旦那様。 大丈夫だよ、持っ て来いとおっしゃたから、持って行くんだ。 お前さん、いくらで売るんだ?  一両。 大変だ、冷やーーッとなるよ、一分とお言い、私の言う通りにしなさ いよ。 貞、叔父さんに太鼓を背負わせてやってくれ、叔父さんの顏をよく覚 えてくんだよ。 早く行って来い、バカーーーッ!

 バカだよ、だからあんな女と一緒になった。 聞いてみよう、本当は惚れて んのかって。 蚊の鳴くような声でね、惚れてるよって言うかも、いい所もあ るんだ、こんちは!