橘家圓太郎の「火焔太鼓」後半2019/01/29 07:16

 こんちは! 太鼓を持って参りました。 通れ、お馬場の先、柳の木のある 所だ。 お馬場、広いね、太い松だね、カラスもいるよ。 柳の木があって、 ごめん下さい。 田中氏(うじ)、道具屋が参った。 道具屋、何ゆえ喧嘩腰な のだ。 むさい太鼓ですから、あなたが買って下さい。 見せなさい。 控え ておれ。

 松の木にぶら下げられて、ノミ、シラミ、ダニ、アリが集まってきて肉団子、 雷がビシーーッと落ちて、真っ黒焦げになる。 私は、そういう一生は嫌だ。 

 長い独り芝居であったな。 来たよ、頭下げとこ。 御意に召された、お取 り上げになる。 買うて下さる。 いくらで、手放す? ん……。 値を聞い ておる、遠慮いたすな。 チ、チ、チ、チ、チ…。 儲ける時に、儲けておけ。  申せ、悪いようにはしない。 手一杯に、申せ。 (両手を広げる) いくら だ? 十万両。 高い。 負けます、一晩中でも負けます。 三百金でどうだ。  三百金て、どんな金で、狸の金は八畳敷。 三百両でどうじゃ。 売るのか?  売る、売る、売る、売る!  三百金、持って参れ。 受取を書け。 受取は、 いりません。 こちらがいるんだ、判を捺せ。 いりません。 こちらがいる んだ。 ベタ、ベタ、ベタ、ベタ。 いつまで捺しているんだ、真っ赤ではな いか。 切餅である、五十金、百金、百五十金! 二百金! 静かにいたせ。  水を一杯下さい。 面倒な奴だな。 喉が涸れる。 二百五十金。 ハッハッ、 アッアッ。 息をいたせ、三百金だ。 どうしましょう? 懐に入れろ。

ちょいと伺いますが、あんな汚い太鼓を、どうして三百両で。 拙者にもわ からんが、お上はお目が高い、遠く明朝の火焔太鼓と申してな、一対揃うと万 両にもなる名器だということだ。 何を聞いたか、わかりません。 帰るがよ かろう。 ありがとうございます、手前どもでは、売ったら売りっぱなし、二 度と引き取らないことになっておりまして。 風呂敷を持っていけ。 あなた に記念に上げます。 ご門番、どうも。 いくら儲かった? 余計なお世話だ。

 カカアが何て言ったか、馬鹿だ、一分で売っちゃえって言ったんだ。 鰻や 玉子焼、腹いっぱい食わせて、鼻の頭をパチパチやって、聞いてやろう、本当 は惚れてんのか、惚れてんのかって。

いま、帰えった、売れたよ。 本当かい、追っかけて来るといけない、押入 れに入って、押入れに入って……、ハウス! 三百両で、売って来た。 お前 に聞きてえことがある、俺に惚れてるのか、惚れてないのか、小さい声でもい い。 一晩寝れば、何とかなるかもしれない、すぐ蒲団敷いて寝ちゃいな。 あ の太鼓、三百両で売れたんだ。 ほんとかい、見せておくれ。 五十両! 子 供のままごとの石鹸箱、持って来たんじゃないだろうね。 百両!  お前さ ん、商売が上手だね。 百五十両! 水、一杯おくれ。 俺より早い。 二百 両! 心の臓が…、なんだかてえと…、口のところうまで…、上がってきたよ うで…。 林家彦六か。 二百五十両! 柱につかまれ。 殺して、止めを!  三百両! 答えてやるから、聞いとくれ。 お前さんに、惚れてるよ。 お前 さん、よくやったね。 こんだァ、市で音のするものを買って来なよ。 半鐘 を買って来よう。 半鐘はいけないよ、おジャンになるから。