三遊亭萬橘の「寄合酒」前半2019/02/27 07:08

 眼鏡をかけた萬橘が、どうもありがとうございますと、大声で話し始めると、 下座で太鼓がドンと鳴り、一瞬、萬橘がそっちをにらむ。 後半の開演です、 一朝が必ず出て来ますから、しばらくの間、おつきあいを願います。 酒はま るっきり飲めないけれど、酒の席は好き。 居酒屋がいい、「すみませーーん、 熱燗を、冷やで!」 焼き鳥屋、L字形のカウンター、サラリーマンの上司と 部下が入口の所に座っている。 なぜか上司が入口側で、奥の部下がやきとり を左手にかざして、写真を撮っている。 上司が「ジドリか?」、すると奥で大 将が「ブラジル産です」。

 八王子に私の落語会を、自宅でやってくれる方がいて、もう10回以上にな る。 9回目に、ここもいいけれどトイレが汚いって言った。 10回目にウォ ッシュレットになっていた。 すると、娘さんが、次はドアの話をしてくれ、 と言った。 10回目に、その席亭が挨拶して泣いている、感動して泣いてんの かと思ったら、すいません、今日は11時過ぎたらお帰り下さい、と言う。 そ の座敷が寝床なので、寝られない。

 金魚は、どうやってつくるのか。 元は鮒(ふな)、お酒の中に入れる、それ がだんだん赤くなってきて、金魚になる。 黒い金魚は? 肝臓を壊している。

 大勢で、こんなこと(親指と人差し指で〇をつくり、口へ持って行く)をや ろうと思う。 手の臭いを嗅ぐのか。 馬鹿、カス、ゴミ、南京虫! みんな、 金を持っているか? 金は懐かしい、今、ありません。 家にあるのか? 家 にはない。 どこにある? 銀行です。 どのくらい? 無尽蔵にある。 お 前のか? お客同士の。 お前、懐は? 夜明けの銀座通り、何となく寂しい。  そっちは? 永田町、もっと寂しい。 幽霊です、お足がございません。 お 前は? 乾いたお尻です、からっけつ。 腕組みしているけど、何だ?  答 が思いつかない。 松っつあんは? (手をついて頭を下げて、)お足の持ち合 わせがございません。 しようがないな、それぞれ行きつけの店へ行って来い。  七輪に、火を熾せ。

 鯛を持って来た。 高いだろ。 買えばね、何の気なしに、魚金の飯台を覗 いたら鯛があったんだ、金公の奴がいない。 鼻歌を歌って帰って来たから、 猫がこれ位の鯛を持っていったぞって、何の気なしに言った。 鯛があると、 痛くもない腹をさぐられる、なくなりゃあ、丸く収まる。 金公、すっ飛んで 行ったから、今頃、どこかの猫が、ボコボコにされている。

 タラを持って来た。 高かったろ、タラ。 角の乾物屋で親爺が居眠りして たんだ。 一枚を左肩に担いだ。 もう一枚をつかんで、いくら? って聞いた。  50円だって言うから、向う横丁で20円だったよって、言って見せた。 品物 が同じじゃない、って言うから、一枚置いて、一枚かついで来た。