北里柴三郎と福沢諭吉の遭遇〔昔、書いた福沢30〕2019/03/10 07:49

        等々力短信 107 1978(昭和53).2.25.

 少し前、朝日テレビで北里柴三郎の伝記『怒涛』をやった。 福沢諭吉役は 小沢栄太郎で、病気で倒れた後の場面など、実によく似ていた。 その昔、三 田の床屋に掛けてあった福沢の肖像を見て、「福沢の野郎は小沢栄に似ている な」といったのを隣の教授に聞かれる事件を起こした塾生がいた。

 人の出会いは貴重なものである。 ドイツに留学し、コッホ研究室で最新の 細菌学を学んで名声を得て帰国した北里は、日本にその力を発揮する場所がな く、不遇をかこっていた。 福沢は親友長与専斎の紹介で、北里の人物を知り、 その不遇に同情し、私費で研究所を建て北里に提供した。

北里研究所五十周年の記念講演で、故小泉信三氏は「この二人の人物が遭遇 することがなかったら、北里研究所は或いはなかったかも知れない。慶應義塾 医学部というものも、なかったでありましょう」といっている。