三遊亭歌太郎の「磯の鮑」2019/08/01 07:11

 7月23日は、第613回の落語研究会だった。

「磯の鮑」        三遊亭 歌太郎

「扇の的」        林家 たけ平

「短命」         柳家 権太楼

       仲入

「一人酒盛」       柳家 小里ん

「唐茄子屋政談」     古今亭 志ん輔

 歌太郎、口の中でゴニョゴニョ、某悪徳プロダクションが話題になっている けれど、われわれのほうは師匠と弟子の関係だ、と。 歌太郎は四代目なのだ が、入門して師匠の歌武蔵が付けた前の名前が「歌ぶと」。 師匠が考えた、も う一つの名前が「歌たね」、大師匠の圓歌が「駄目だ、こりゃあ」と言った。 大阪の(桂)都んぼさんと群馬のある町に公演に行った。 町のお偉いさんが 挨拶に見えて、「歌ぶとです」、「都んぼです」と言ったら、「チョウチョウです」。 

三道楽をやらなくちゃいけないよ、と言われた。 飲むはいいけれど、打つ は多摩川競艇場。 買うの本道は吉原、オイラン(花魁)という字は、花に魂 みたいな字を書く。

 源ちゃん、持てよう、持てようと、また吉原に行こうと思うが、どうだろう。   往来で、昼日中から、そんな相談かい。 おかみさん連中にも、話をしたんだ。  ボウーーッと、吉原に行くと、身ぐるみ剥がれるぞ。 竹ちゃんが行って、持 てた、儲かったって、言うんだが…。 吉原は、だまし、だまされるところだ。  持てて、儲かる方法はないのか? ねえことはねえ、女郎買いの師匠につくと いい。 隣町の目黒のご隠居だ、俺が一筆書いてやろう。 教えてくれるまで 梃子でも動かないって言って、おまんま炊いて持って行け。

 ごめん下さい、女郎買いの師匠はいますか。 何だい、誰だ、お前は。 隣 町の与太郎で、源兵衛さんの手紙を持って来ました。 「女郎買いの師匠と偽 り…、つかわした男、適当におからかい下さるよう」か。 教えてくれるまで 梃子でも動きません。 いいけど、飢え死にしても知らないよ。 おまんま炊 いて持って来ました。 わかった、わかった、入りなさい。

 二十年ほど前、若かった時は、よく遊びに行ったもんだ。 万事が粋でなき ゃならない。 刻限もいい塩梅でなければ駄目、大門の行灯に灯が入ったとた んに入る。 ギュウという若い衆が、「いかがですか」と聞くから、「いかが様 は百万石かい」とでも言えば、「遊び慣れていらっしゃる、お登楼(あが)り下 さい」となる。 「登楼ると、富士山の一つも見えるかい?」と言うと、一目 も二目も置かれる。 暖簾をかきわけ、梯子段をターーッと駆け上がるんだ、 途中で止まらないという縁起だ。 上がった所が引付け、待合室だ、おばさん が出て来る。 神田の? 親類じゃない、遣り手婆アだ、女の妓の差配をして くれる。 面白いのは、上(かみ)から三枚目の女だというから、頼む。

 焦らないで、どーーんとして、待つ。 一服どうぞって出すから、一服やっ て、ついと返す。 相手の女をいい心持にさせるんだ。 三年前から岡惚れで ね、これが磯の鮑の片想いだった、登楼ってよかった、と言って、肩をポンと 叩く。 ずいぶん可愛がってもらえる。 それが吉原で儲かる法だ。 わかり ました、早速、行って参ります。

 大門の前に、変な奴がいる、行灯が灯った途端に駆け出した。 粋な野郎か と思ったら、余所の旦那にぶつかって、すごく痛いって、鼻血を出した。 目 黒のご隠居に教わった通りにやって、登楼ると、上から三枚目の女をお願いし ます。 手古鶴さーん! ちょっと変わった方なんで、気を付けて。

 こんにちは。 どーも、いらっしゃいまし。 パフッ、パフッ、早く煙草を!  怒られたのは、初めて、大層お急ぎで。 ねぇー、花魁、ずっーーと待ってい たんだよ。 どこのどなたか知らないけれど…(どこかで聞いたことがある)。  三年前、川で溺れていました、田舎の。 あなた、河童? 二十年前は若かっ た、三つだった。 伊豆のワサビの片想いでねえ。 花魁の肩を、(思いっ切り) ボンと叩く。 痛い、痛いよ! 涙が出たよ、ここにほら。 伊豆のワサビが 効いたんだ。