林家たけ平の「扇の的」2019/08/02 07:11

 たけ平はグリーンの羽織に、黒の縦筋に所々模様のある着物で、真打になっ た2016年8月に「袈裟御前」をやった時と同じマクラをやった(記録してい る変な客に注意)。 さっき着物で人を待っていたら、おばさんが話しかけてき た。 私は落語家を沢山知っているのよ、あなた着物を着て落語を聞きに来た のね、って。 この中に、その方がいる。 講談は落語と違う。講談は教えて くれない、自分で考えろと言われる。 「時は元亀10年壬申(みずのえさる) 10月14日」。 違う。 「時は元亀10年壬申10月14日」。 違う。 (何 度か調子を変えても)違う。 どこが? 15日です。

 落語は、元気を与える、落語を聴くと元気になる、元気じゃなきゃいけない。  落語を聴く人は、人間的に優れている、上品で、心やさしい。 一番前におば あさんがいて、いちいちうなずく。 大阪の人は寝ない、大阪フミンだから、 とやったら、栃木の人も寝ないよと言った。 よく食べられる人が元気だが、 北千住で耳の遠い人が注文を取る店があって、おじいさんがラーメン、ラーメ ン、ラーメン、って注文した。 ラーメンが三つ出て来た。 入院中のおじい さんが、なかなか言うことを聞かない。 起きて下さい、起きて下さい! 睡 眠薬を飲みましょう。

 祇園精舎の鐘の声、『平家物語』を読んだ方いますか? (たけ平は、以後し ばしば、客席に挙手や拍手を求めるが、反応は鈍い。) 諸行無常の響きあり、 はるばる来たぞ、函館へ、驕る平家は久しからず。 五十間、100メートル先 の舟に平家の女、玉虫の前、絶世の美人、タスキに「ミス平家」、船べりに立て た竿の先に日の丸を描いた扇を指さし、「やよ、源氏の共腹、源氏の弓の力を見 たし、この扇の的を射抜く者はなきや」と挑発した。 平家方はセンスがない。  ここは拍手をするところで…、恥ずかしさが拍手で救われる。 拍手の練習を しましょう。 これ炭酸ですか? ソーダ。(拍手) やればできるじゃないで すか。

 源氏方の総大将、源義経、歴代の大河ドラマではイケメンだが、実は身長148 センチ、反りっ歯で、髪の毛が薄い、次の大河ドラマでは猫ひろしがいい。 義 経の父親は源義朝、女ったらしで、プレーボーイ、愛人がいた。 愛人は持っ た方がいい、愛人には「ラマンの法則」がある。 「男の年齢÷2+7」、40歳 の男なら20+7=27歳。 今、計算したでしょ。 57歳のおばさんが、逆算 すると、相手は100歳になる。 源義朝の愛人が常盤御前、時は金なり、一幕 の終り、生れたのが義経だった。

 扇の的当ては、平宗盛の計略、挑発。 源氏は、祈り岩から打つだろうと、 岩陰に伊賀の平太左衛門を忍ばせ、足の裏をくすぐる作戦だった。 源氏方で は、大事な役目なので、弓の名手が二十五人、四十肩、五十肩と、ことごとく 断わりを入れる。 しばらくお待ちをと、畠山重忠が出て、那須与一、十七歳 を推した。 十余一、与一、十一番目の子。

 (ここから、講談調)時は文治元(1185)年2月18日、場所は屋島、夕暮 れ間近の酉の刻、的の扇は波にもまれて、上下左右に動いてさだまらない。 下 野の人、那須与一宗高、タッタッタと前に出る。 十七歳でそうろう。 海に 出て、祈り岩に上がったが、忍びの者は気付かず、鏑矢を取り出し、弓をキリ キリと引き絞り、ヒョウと矢を放つと、見事扇の的に当たり、扇はヒラリヒラ リと海に落ちた。 源氏方はもとより、平家方からも大喝采、平家方の連中が 踊った。 その後の歴史は明らかだ、踊る平家は久しからず。