柳家権太楼の「短命」後半2019/08/04 07:39

 短命? 短命、長命の反対だ。 短命、長命、漫才みたいだね。 仲が良す ぎる、そこだよ。 ご大家だ、ご亭主の仕事なんて、ないんだろう。 番頭が しっかりしている、旦那は月に一遍帳面を見るぐらいでいい、あとはぶらぶら している。 そこだ、三過ぎると言って、短命のもとだ。 <何よりもそばが 毒だと医者は言い><その当座いつも箪笥の鐶(かん)が鳴り>っていうな。  亭主野郎、いつもイチャイチャしていて、見ていられない。 わっしも庭の木 の手入れをしながら、見ていて、木の上から落っこっちゃった。 差し向かい で、おまんまを食べている。 おかみさんの白魚のような指が触れる。 指と 指が、触れる、短命だろう。 爪の間に、バイ菌か何か、あるんすかね。 受 け取らなかったら、下に落っこっちゃうとか。 そういう話じゃあない。 広 い家だ、誰も来るような気遣いはない。 (腕を組んで、膝を叩く)そうか、 ずっと、おまんま食ってなきゃあならないのか。 わからないんなら、膝叩く な。

 炬燵に入るだろう。手より足のほうが長いので、足が触れる。 おかみさん は、ふるいつきたくなるような、いーーい女だ。 炬燵の布団がある。 短命 だろ。 カカトとカカトじゃない。 (手の仕種を見せ)手はやめなさい、手 は浅草でやりなさい。 わっしゃあ、勘のいい方で。 よくないよ。 短命だ、 ありがてえ。 これから伊勢屋に行って来る。 笑いながら、行くんじゃない よ。

女は魔物だよ、男三人殺している。 今、帰って来た。 今、帰って来たじ ゃないよ、どこ行っていたんだい。 隠居のとこだ、悔やみの稽古をしていた。  子供じゃないんだから、馬鹿! 馬鹿! 飯、食ってくよ。 飯!(と、手を出 す) 自分でやったら、いいだろう。 おまんま、よそってくれ。 自分でや んなよ、亭主づらして。 お前がよそったのを、喰いたい。 手があるんだろ、 冗談じゃないよ。 いっぺんでいいから、やってくれよ。 やってやるけど、 ほら(と、茶碗でしゃくって渡す)。 お前、シャモジ使わなかったな。 ホラ ッ!(と、投げる) 放るな、手渡ししろ。 人に見られたら、何て言われる か。 ほら!(その先の顔を見て…)あーあ、俺は長命だ。