柳家小里んの「一人酒盛」 ― 2019/08/05 07:13
酒は、百薬の長とも、命を削る鉋ともいわれ、ほどほどがよろしいようで…。 酔ってないって言う人が、ベロベロ。 酔ってても、自分のやっていることは 分かっている、百円ライターは置いていっても、ダンヒルはちゃんと懐に入れ る。 大声で歌って歩いていても、交番の前では歌を止める。 前から若い女 が来ると、寄って行く、それでお尻を撫でたりする。 酒を飲むと、お友達が 出来る。 居酒屋で、お銚子、遅いようですね、来るまでのつなぎに一つどう ぞ、来れば、ご返盃となる。 下戸は、こうはいかない。 おしるこ、遅いよ うですね、来るまでこの食べ掛けをいかが…。 <酒の無い国へ行きたい二日 酔、また明くる日には帰りたくなる> 禁酒したんだ。 どう、やめた。 向 う一年。 二年に延ばして、晩酌やったらどうだ。 じゃあ、三年に延ばして、 朝晩やろう。
熊んとこへ、行ってくるよ。 よしなよ、言いたいことを言えればいいよ、 お前さん、言えないでしょ。 明日までに納めなきゃあならない仕事もあるん だよ。
留さん来たのか、オッカア、寄ったのかい。 忙しいのか。 明日までに納 めなきゃあならない仕事がある。 しょうがないな。 何年か前に世話した男 が、上方から帰ってきて、いい酒を五合置いて行った。 蔵口から取り立ての 酒だってんだ。 帰って、仕事しろよ。 これからやるのか、付き合うよ、仕 事は夜なべすれば間に合う。
うめえ酒だっていうから、燗で飲もうと思ってな、留さん、お前やってくれ るかい。 七輪と消壺が、そこにある、紙のせて、火をつけてくれ。 薬缶に 湯冷ましが入ってる、徳利は鼠入らずに二本ある。 お前とゆっくり飲みてえ と思ってな。 ぬる燗でいい、湯呑茶碗に一合入る、いつもこれでやってるん だ。 入るだろ。 おい、美味いかい。 駄目だよ、何か言っちゃあ、今、味 わっているんだから。 香りがいいし、美味えし、喉越しがいい、美味え酒だ。 一人で飲んじゃあもったいないから、留さん、お前を呼んだんだよ。 いい酒 だ、上方から来て、樽の中でもまれて、富士見の酒という、その酒だ、本当に いい酒だ。 お燗ついでに、お酌してくれるか、悪いな。 上燗ですよ、上官 に敬礼ってもんだ。 お前は、酒飲みのことがわかるんだ。 親父は花見酒で、 物を食いながら飲んでいたもんだが、俺は塩をつまんでも飲める。 こないだ 居酒屋で、若え野郎が一合徳利十本、丼に入れて、キューーッとやった。 外 へ出たら、その若い衆が電信柱によりかかって、寝ていた。 粋がって飲むこ とはねえんだ。 俺も、終点で終電になって、円タクで帰って来て、カカアに 今までどこにいたって言われたことがあった。
お燗、ついたかい、もって来い。 俺も、やりたい。 そう、飲まなきゃ損 だよ。 鼠入らず開けてみてくれ、缶に海苔がないか、何かないか、そうだ、 いいのがあった、台所の上げ蓋上げると、漬物の樽がある、掻き回してごらん。 茄子、キュウリ、生姜、トントントンと覚弥に切ってくれ。 留さん、上手い ね。 覚弥の香香なんか、いいよ。 後の残り、お燗につけてくれ、手をよく 洗ってな。 覚弥の香香、乙ですよ、酒は美味いし、格別だ。 よかったねえ、 お前と飲めてね。 乙だよ、今日はいい日だね。
お燗、ついたかい、ありがと。 あーーあ、いい心持になってますよ。 何 か、音の出るものがいい、三味線、爪弾き…、お前、歌いなよ。 酒、飲まず に歌えるか。 何、口とがらせているんだ、酔ったら、酔ったようにしなきゃ あ。 職人だって、歌の一つも歌えなくちゃ。 小唄ばやりだけれど、短いの がいいね、都々逸なんて。 ♪人の口には戸は立てられぬ、悔しきゃ噂を立て てみろ。 おい、よーよーぐらい、言ったらどうだ、口とがらせて。
薬缶の中でコトコト言っているよ、早くあげなきゃあ、駄目じゃないか。 留 さんは、お燗番なんだから…。 熱い、布巾か何かで持たなきゃあ駄目だ。 湯 気が出てるぞ。 酒なんて、フーフー吹いて飲むもんじゃねえ。 酒がいいか ら、まだ飲めるけど、気を付けなきゃあ駄目だよ。 何で、睨みつけてんだよ。
熊さん、どうしたの。 今、留さんが、血相変えて駆け出して行ったよ。 ほ っとけ、ほっとけ、あいつは、酒癖が悪いんだ。
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