古今亭志ん輔の「唐茄子屋政談」中 ― 2019/08/07 07:18
徳は、泥のように寝る。 すまないね、そこへ置いといてくれ。 煤掃きの 時の半纏と、お山の時の笠、足袋は白と黒の片っ方ずつしかない…、それでい いよ。 股引穿いたら、足袋を履け。 白と黒でかっこうが悪い。 そんなこ とが言えるのか。 腹掛けのどんぶり、背中でバツにして。 唐茄子を売んな、 さっき、荷が来てる。 どこの店で? 天秤棒で、唐茄子屋でございって、売 って歩くんだ。 みっともない、勘弁してよ。 それが嫌なら、昨日の汚い着 物を着て、出て行け。 唐茄子の方で、お前なんかに売られるのを嫌がるよ。 遊ぶんなら、自分で稼いで、自分の金で遊べ。 それなら、叔父さんも一緒に 行ってやるよ。
明日からですか。 明日じゃない、今日からだ。 行った先で、弁当つかわ せてもらえ。 担ぐんだよ、それっぱかり、担げないのか。 腰で担ぐんだよ。 (自分で担いでみて)少し、下ろそう。 豆腐屋さん、路地入ってくるんじゃ ないよ。 入ってくるな、納豆屋!
達磨横丁を出て、吾妻橋を渡る、看板に笠が当たって、アミダになり、ウロ ウロ、ヘラヘラと歩く。 田原町あたりまで来たところで、炎天油照り、汗が 目に入って、何も見えない。 石に蹴躓き、ドーーーンと倒れた。 「人殺し!」
唐茄子、拾えよ。 お前一人で担いで来たのか。 何、遊びが過ぎて勘当に なって、初めて天秤棒を担いだのか。 今、売ってやるから。 源さん、唐茄 子、三つばかり買え。 二つ。 そこの誰だか知らない人、唐茄子買ってくれ。 銭を置いてって。 糊屋の婆さん、唐茄子はどうだ。 今、湯に行くところで。 半公、こっちへ来い、唐茄子買ってくれ。 俺はガチャガチャじゃない。 待 て、三年ばかり前、お前が親方をしくじって、ウチの二階に居候していた時、 唐茄子の安倍川四十八切れ食ったろ。 銭はやる、唐茄子はいらねえ。 この 人は物貰いじゃないんだぞ。 持ってくよ。 いざとなったら、でけえの選っ てるよ。 あらかた売れたな、残りは二つだ。 ありがとうございました。 今 度また来たら、声ぐらいかけなよ。 親切な人がいるもんだ。
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