春風亭正太郎の「五目講釈」2019/08/28 06:01

 虫の音、蝉しぐれ、ようやく朝夕の涼しさが感じられるようになった。 26 日は、第614回の落語研究会だった。

「五目講釈」    春風亭 正太郎

「彌次郎」     柳家 小せん

「鰻の幇間」    春風亭 一之輔

       仲入

「小言念仏」    橘家 圓太郎

「淀五郎」     柳亭 市馬

春風亭正太郎は、正朝の弟子で、同じく明治学院大学オチケンの出身、前に この会で「にかわ泥」「そば清」を聴いていた。 実は、次に出る柳家小せんも 明治学院大学で、ブラスバンド部出身というのを、知っていた。 2013年5 月に「明治学院創立150周年記念 明学落語会」があったからだ。

正太郎は、若手、二ッ目はいろいろな仕事がある、やりづらい場所でもやる。  老人ホームの慰問、北海道札幌で噺の途中に感想を言われた。 2,3分、マク ラが終ったあたりで、「面白くなーーい!」と。 ショックで死ぬかと思った。  学校寄席で青学初等部へ行った、賢い、笑いの段階で理想値通りの反応があっ た。 東北の中学、荒れた中学、体育館にガヤガヤ300人、出囃子のCDを担 当してくれた教頭先生が、すみませんと言って、袖から注意してくれた。 (大 声で)「オラッーーーッ!」……、「どうぞ」。

若旦那が吉原での遊びの末に勘当になり、出入りの職人の家の二階に居候し ているのは定番だ。 その家のおかみさんには目の上のたんこぶ、川柳でも、 <居候角な座敷を丸く掃き>、<居候三杯目にはそっと出し>というが、ずう ずうしくなると<居候八杯食って胃をこわし>。 お前さん、二階のあれ、ど うすんのよ、追い出してちょうだい、あいつが出て行かないなら、あたしが出 て行くから。 かみさんにせっつかれた親方、お向こうのお光ぁんの所でお茶 を飲んで来いと出し、天井を箒でつつく。 もう、ちょっと左、と若旦那。 お 早う! 今、何時だと思っているんですか、私は一仕事してきた。 あなたは 町一番の生薬屋の若旦那だ、何かやりたいことがあるんですか。 コウダン。  道路ですか、住宅ですか。 講釈師。 素人だ、芸は身を滅ぼすっていいます。  上手いんだよ。 じゃあ、町内に声をかけて来るから、今夜二階の座敷でご披 露頂くというのはどうでしょう。 今は、夕食後、暇になればテレビでしょう が、昔は町内に一軒ずつ寄席があったもので。

夕飯を食べた連中が集まって来る。 ドーーン、ドン、ドン、ドンと来い、 と一番太鼓。 片しゃぎりに乗って、紋付羽織袴の若旦那が登場する。 ヨー、 ヨー、待ってました、居候! 先生と、呼べ! 講談は釈台という、小さな机 がある、笑点で昇太師匠の前にあるやつ。 張り扇を持って、釈台を叩く。 落 語のような出囃子はなく、片しゃぎり、時太鼓で出るが、咳払いやお茶を飲ん だりして、なかなか始めない。 ブッファ! さまざまな作業をする、洟をか む、かんだ洟を覗き、嫌な顔をして横を向き、お茶を飲む。 フーーッ、ズル ズルズル、アッ、ブッファ! そして、ようやく、小さな声でしゃべり始める。   赤穂義士伝の口上を抜き読みで申し上げます。 鎖帷子一着なし、籠手脛当も 覚えの手の内、地黒の半纏段だら筋、白き木綿の袖印、銀の短冊、襟に掛け、 大高源吾殿、えでたる掛矢振りかざし、手もなく破る表門。 後に続くは、間、 磯貝、近藤勇、土方歳三、安倍晋三、橋本五郎。 一天にわかにかき曇り、水 戸の浪士が十九人、桜田門外に大老井伊直弼の首を刎ねる、死んだはずだよお 富さん、生きていたとは、知らぬ仏の玄冶店、旅ゆけば、清水の次郎長、海道 一の大親分、那須与一宗高、ひきしぼったる弓を発止と放つ、安倍晋三の胸元 に。 帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、人呼んで、フーテンの寅 と発します、姉が女で、妹が女、垂乳根の胎内よりい出し時、鶴女、鶴女と申 せしが、それは幼名、成長ののちこれを改め清女と申しはべるなり、椎の木林 のすぐそばに、小さなお山があったとさ。 無事に吉良上野の首級をあげ、本 懐遂げた一行、回向院から永代橋にかかる。 寺坂吉右衛門は、広島へ。 ち ょうど、お時間、これにてご免蒙ります。

何なんだ、あの居候、帰っちゃったよ。 何でも、薬屋の若旦那だそうだ。  道理で、いろいろ調合してあった。