バルトンとバートン(4)〔昔、書いた福沢112-4〕2019/09/15 07:53

    三 スコットランドの家系探索

 没後百年バルトン忌のシンポジウムで、日本スコットランド協会理事稲永丈 夫さんから、W・K・バルトンの家系探索が着々と進んでいるという報告があ った。 稲永さんを通じて、バルトンやバートンをめぐるエピソードや曽孫鳥 海幸子さんのことが、スコットランドに伝えられ、4月には現地の新聞ザ・ヘ ラルドに、5月にはエジンバラ・イブニング・ニューズ紙に記事が掲載された。  するとバルトンの母方、イネス家の子孫にあたる女性が名乗り出られ、7月現 地調査に赴いた稲永さんに、鳥海幸子さんをぜひスコットランドに招きたいと 語ったという。 その調査で稲永さんは、バルトンの家系図の空白をかなり埋 め、ジョン・ヒル・バートンやコスモ・イネスの墓石も確認してきている。 ジ ョン・ヒル・バートンの生地アバディーンの図書館では、クレイグ教授の論文 の脚注にも出てくるジョン・ヒル・バートン著『ブック・ハンター』1882年版 所収のキャサリン夫人(W・K・バルトンの母)の「ジョン・ヒル・バートン・ メモアー」を読んできた。 手紙がふんだんに挿入された、達意の文章だそう だ。 ジョン・ヒルが最初の夫人を亡くした時、無二の親友であったコスモ・ イネスとの長い散歩が慰めであり、6年後イネスの娘キャサリンと結婚するこ とになる。

    四 シャーロック・ホームズの登場

 7月、日本シャーロック・ホームズ・クラブのメンバーが、青山墓地のバル トンの墓を訪ねた。 メンバーからの問い合わせで、水道関係のバルトン研究 者とのつながりも出来た。 没後百年バルトン忌で、シャーロック・ホームズ 研究家の石井貴志さんは、W・K・バルトンと、シャーロック・ホームズの作 者で3歳下のアーサー・コナン・ドイル(1859-1930)が、1860年代、スコッ トランドのエディンバラで兄弟のようになかよく幼少年時代を過ごした親友だ ったという話をした。 ジョン・ヒル・バートン家が、物心両面でドイル家を 援助していたためだそうだ。 やがてドイルは医師になったが、ドイルの短編 小説にバルトンが実名で登場したり、来日後のバルトンが英国の写真雑誌に連 載していた評論記事の原稿料をドイルが送金したりと、二人の友情は終生変る ことなく続いた。 バルトンの急逝がなければ、コナン・ドイルは日本を訪問 する予定だったという。