カタカナ語を減らす[昔、書いた福沢160]2019/11/25 07:00

       カタカナ語を減らす<小人閑居日記 2002.12.26.>

 国立国語研究所が25日、「分かりやすい日本語のための一つの参考」として、 63の外来語についての言い換え例を発表した。 「アジェンダ 議題、課題、 行動計画。 アセスメント 査定、影響査定、影響評価。 アメニティー 快 適性、快適さ、心地よさ。 スキーム 枠組み、計画。 コンセンサス 合意。  バリアフリー 障壁除去」などなど。 加藤秀俊さんは『暮らしの世相史』の 「日本語の敗北」で、日本語のむずかしさを論じたなかで、柳田国男は昭和1 4(1939)年の『国語の将来』で「洋語流行」にふれているが、それから 60年を経過したこんにち、「洋語流行」はおどろくべき加速現象をうみだして いると、指摘していた。 そして大都市の電話帳ほどの厚さの『現代用語の基 礎知識』のような辞典が、あれほど各種大量に発行されている国はたぶん日本 以外にはないだろうといった。

 国立国語研究所の今回の試みは、まことに結構だと思う。 ただ、訳語に漢 語、漢字が多いのが、もう一工夫いるところではないか。 幕末から明治初期、 福沢諭吉が、外来語を苦心して一般に使われている俗な日本語に言い換えよう とした前例を、ぜひ参考にしてもらいたい。 「インフォームド・コンセント  納得診療」などは、まずまずというところか。

       学者先生のカタカナ語<小人閑居日記 2002.12.27.>

 学者先生の議論に出て来るカタカナ語には困ってしまう。 最近だいぶ市民 権を獲得した「アイデンティティー」のたぐいである。 遠い昔の学生時代に も、理解できたかどうかは疑わしい。 一例に挙げて申し訳ないのだけれど、 先日、苦労した丸山眞男さんの『福沢諭吉の哲学』(岩波文庫)を、ぱらぱらめ くってみた。 ドグマ、タウトロギー、アプリオリ、ライト・モチーフ、パテ ィキュラリズム、コロラリー、ノミナリスティック、パターナリズム、デスポ ティック、レーゾン・デタ、ルサンチマン、クレデュリティ、などなど。 そ の程度は一般教養だという前提が、現在では明らかに崩れているといえるので はないだろうか。

 8・9月号の『三田評論』の特集が「サステナブル建築のこれから」という 題で、この「サステナブル」が分からない。 編集委員のお一人に手紙を書く 用事があったので、「福沢ならどう訳したでしょう」などと皮肉を書いた。 そ の直後、テレビを見ていたら、国連の環境会議で演説している事務総長の後ろ の、会議のマークに「サステナブル」の文字があった。 話題の言葉なのであ った。 教養とカタカナ語、なかなかむずかしい問題ではある。

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