ホーム・グラウンドは落語と福沢[昔、書いた福沢164]2019/11/29 07:12

      ホーム・グラウンドは落語と福沢<小人閑居日記 2003.1.25.>

 23日の落語研究会で柳家一琴のやった「紋三郎稲荷」は、あまり聴かない 噺だ。 いつか香月泰男さんを見に笠間の日動美術館に行った時、お稲荷さん にも寄ったけれど、笠間稲荷が「紋三郎稲荷」という名前だというのは知らな かった。 浜町(人形町)に東京の出店(?)があることは知っていたが、明 治座の横にも「紋三郎稲荷」があるというのは知らなかった。 榎本滋民さん の絶筆となった「落語掌事典」によると、お稲荷さんの狐は、祭神ではなく、 神仏に仕えて神威・霊験を増進する「使わしめ(使い姫とも)」で、八幡の鳩、 熊野の烏、比叡(日枝・山王)の猿、春日の鹿、弁天の蛇などと同様で、親族・ 従者の意味の「眷族(けんぞく)」とも呼ばれる。 霊性に富み、憑(つ)いた り化けたり善導したり懲戒したりすると信じられてきた、という。

 福沢諭吉は幼少のみぎり、養子になっていた中村という叔父の家の稲荷の社 の中に何が入っているか、疑問を起こし、明けてみたら石が入っていたから、 その石を打っちゃってしまって、代りの石を入れておき、また隣家の下村とい う屋敷のお稲荷さんをあけてみたら、神体は何か木の札だったので、これも取 って捨ててしまって、平気な顔をしていると、まもなく初午になって、幟(の ぼり)をたてたり太鼓をたたいたりお神酒(みき)を上げてワイワイしている から、「ばかめ、おれの入れて置いた石にお神酒を上げて拝んでいるとはおもし ろい」と、ひとりうれしがっていた、という。 そういえば、三田の演説館の あるあたりを稲荷山といっていたが、福沢がお稲荷さんを祭るわけはないから、 旧島原藩邸時代にお稲荷さんの社でもあったのだろう。

 で、「紋三郎稲荷」だが、山崎兵馬兼義(?)という侍が風邪を引いたので、 狐の胴着を着込んで駕篭に乗りシッポが出ていたのを、駕篭屋が狐を乗せたと 勘違いする。 「旦那さまはどちらからいらっしゃいましたか」気づいた山崎 が「笠間から来た」「笠間からと申されますと、牧野様の御家中ですか」「牧野 の家中ではない」「江戸はどちらへ」「王子に参る」「エエッ、それでは旦那さま は、ことによると紋三郎様の、ご、ご眷族の方でいらっしゃいましょうか」「い かにも、わしは紋三郎の眷族である」