『福澤諭吉書簡集』による研究の可能性[昔、書いた福沢178]2019/12/22 07:54

   新『福澤諭吉書簡集』による研究の可能性<小人閑居日記 2003.5.29.>

 『福澤諭吉書簡集』(岩波書店)は、今年の1月28日第九巻を出して完結し た。 その第九巻、福沢諭吉書簡集編集委員会の「編集を終えるにあたって」 の謝辞のなかに、「特に忘れがたいのは、長年出版界で活躍された経験に基づく 竹田行之氏のご協力である。今回の書簡集を実現させたのは、ひとえに氏のご 尽力であったと言っても過言ではない」とある。

 その竹田行之さんと、浦賀・九里浜の見学会で、少しお話をするチャンスが あった。 竹田さんは、この『福澤諭吉書簡集』を使って研究することによっ て、『福翁自伝』によるのではない新しい福沢像が描けると思う。 慶應から若 手の研究者がどんどん出て、研究を進めてくれることを期待したい。(最近慶應 以外の研究者が、福沢研究の論文や本で、どんどんいいものを出している) 今 後はそのような体制をつくる道筋をつけたい、と話しておられた。

 私が思い出したのは、『三田評論』5月号「特集 書簡が語る福澤諭吉」の玉 置紀男(たまきのりお)商学部教授の「福澤諭吉の近代日本経営史」という論 文のことだった。 玉置教授は福沢書簡を材料にして、福沢の活動の原動力と なった資金元、その人脈、丸善、横浜正金銀行、三菱、山陽鉄道、慶應義塾大 学、三井などとの関係を明らかにして、すぐれた起業家・経営者としての福沢 の姿を描き出している。 その結語は、こうだ。 「福澤諭吉の生涯は、近代 日本経営史の序章である。にもかかわらずこの序章はこれまで書かれることは なかった。それは、歴史家が福澤書簡を事実上無視してきたからであろう。い まこの近代日本最初期経営史料の主題材、福澤書簡にあらためて取材して筆を 起こせば、福澤諭吉を主役とした新しい近代日本経営史を描けるに違いない」