「私の福沢諭吉」俳句「読書渡世」2020/01/01 08:00

 明けましておめでとうございます。 毎年元日のお笑い種に、ご覧に入れて いる自作の俳句、俳誌『夏潮』一月号の親潮賞応募作、題して「読書渡世」二 十句です。 「昔、書いた福沢」の途中、期せずして「私の福沢諭吉」俳句と なりました。

初句会自由は不自由の中にあり

初午や密かにお札捨ててみて

寒暁の豆腐屋もまた実業家

筆一管で生きる決意や冴返る

戦争の最中も書読む春の風

シスコ春メリケン少女と写真撮る

大船は航跡太し春の海

古川の土手の散歩や朝桜

娘らは長唄復習ふ春の宵

物干に裸で寝るや星涼し

取り合ひて蘭和辞書引き明易し

筍飯目黒不動は藪の中

人生蛆虫渡れ浮世を軽く視て

宵闇に殺気の人と擦れ違ふ

門閥は父の敵よちちろ虫

燈火親し一家総出の手内職

秋風や父の形見の典籍売る

爽やかや読書渡世の一市民

鄙事多能下宿の障子みな洗ふ

棄つるのは取るの法なり煤払

 この内『夏潮』一月号に掲載して頂いた、つまり辛うじて俳句だったのは、 次の三句でした。

寒暁の豆腐屋もまた実業家

大船は航跡太し春の海

爽やかや読書渡世の一市民