柳家小はぜの「厄払い」 ― 2020/01/02 07:42
12月25日はクリスマスだが、なぜか三年連続の落語研究会(第618回)だ った。
「厄払い」 柳家 小はぜ
「八幡様とシロ」 鈴々舎 馬るこ
「幾代餅」 林家 正蔵
仲入
「粗忽の使者」 柳家 花緑
「鼠穴」 柳家 権太楼
頭つるつるの柳家小はぜ、2016年まで座布団の返しをやっていて、その年暮 に「たらちね」、今年5月「富士詣り」を聴いていた。 黒の羽織に鼠色の着 物、きちんとした恰好だ。 与太郎か、お袋がこぼしているぞ、ぶらぶらして ないで、何かやれ。 おじさんが、元手のかからない商売を教えてやる。 厄 払いだ、豆とご祝儀の御足がもらえる。 口上を憶えろ、「ああら、めでたいな めでたいな、今晩今宵のご祝儀に、目出度きことにて払おうなら、まず一夜明 ければ元朝の、門に松竹しめ飾り、床にだいだい鏡餅、蓬莱山に舞い遊ぶ、鶴 は千年、亀は万年、東方朔は八千歳、浦島太郎は三千年、三浦の大介百六ツ、 この三長年が集まりて、酒盛りいたす折からに、悪魔外道がとんで出て、さま たげなさんとするところを、この厄払いがかいつかみ、西の海へと思えども、 蓬莱山のことなれば、須弥山のほうへサラリ、サラーリ」。
いつ、憶える? 今だ。 今はダメだ、来年の今日までに、憶えてくる。 書 いてやるから、当り箱を、硯(すずり)箱だ。 当れ、墨を磨ることを当るっ ていうんだ。 気を回せ、しっかりしろ、男なんだから、稼いでお袋を安心さ せろ。 もう23だろ、一人前だ。 25です。 なお、いけねえ、仮名で書い てやるから、よく憶えろ。 御足は、いくらもらえる? 一銭か二銭だ。 少 ないな。 数で稼ぐんだ。 ご祝儀はお袋に、豆は豆で売る所がある。 豆腐 屋だろ。 炒った豆は、豆腐にならない。 焼豆腐になる。 婆さん、感心し てるんじゃないよ。 豆ねじとかになる、駄菓子の問屋に売るんだ。 家に戻 って、よく稽古して、暗くなる前に出かけるんだぞ。
与太郎、家に戻り、稽古しないで、ゴロッと寝てしまう。 真っ暗だ、おー 寒い。 きれいな着物の人が通る、お年越だ。 こんばんは。 何だい。 あ のー、厄払いですけど。 気味が悪い奴だ、地べたから出たような。 こんば んは、厄払いです。 ウチはもう、済ましたよ。 こんばんは、厄払いです。 安くしときます、見切り品ですから。 表に変な奴が来たぞ、下駄、大丈夫か。 御厄、払いましょ、厄払い! 上手いな、本職だ。 付いて行こう。 何だ、 お前、マナカじゃないか。 一緒に行きましょう。 駄目だ、向こうへ行け。 また、お前か。 駆け出して行っちゃった。
えーーっ、厄払いですよ。 屑払いじゃなくて、おめでたい厄払い、厄払い はめでたいな。 何だ、表でグチュグチュ言っているのは、呼び入れてみよう。 何だ? 変わった調子だな。 厄払いしますけど、豆と御足ちょうだい。 五 厘銭がありました。 それでいい。 (紙包みを開ける。) 中、覗くんじゃな いよ。 あれっ、何、これ? 一銭五厘だよ、こまけえな。 大きな屋台張っ てるけど、懐は苦しいんだ。 (豆食いながら)いい商売だね、払う前から豆 を食べられるなんて。 もしもし、豆、生のところがあるよ。 厄払いをしな いのかい。 あと少しだから、食べよう。 すいません、お茶と楊枝を。 出 してやれ。 変わっていて面白いけれど、来年からは呼ぶのやめよう。 いい お茶ですね。 さよなら。 厄払いをやらないか。 払いますけれど、障子を 閉めて…、覗くと目の玉に手を突っ込みます。 「あらめ、あらめ、でたいな。 あら、めでたくなく、なくなく…、こんばん、こんばんは、こよいの、ごしゅ うぎに…」。 「つるは十年」。 千年だろ。 「ひよっこです」。 「か、めは、 トラホーム」、「すみません、向かいの酒屋の看板、何て読むんですか?」 よ ろずやだ。 「かめはよろず年」。 「とうぼう……」、真っ暗になっちゃつた、 電気の球が切れたんだよ、そのすきに逃げちゃおう。 旦那、厄払いがいませ ん、あっ、逃げて行きます。 逃げて行く、それで今、逃亡と言ってた。
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