絵本作家スズキコージさんと、堀内誠一さん2020/03/27 07:00

 22日の「日曜美術館」は昨年4月7日の再放送で、奇想天外な絵本作家、画 家スズキコージさん(71歳)の世界だった。 神戸の北野異人館街の美術館の ベランダで、三日かけて幅4m高さ2mの大きな絵を描くのをライブで公開し ている。 まずキャンバスに水をかけて、絵具を直接手につけて描き出す。 そ の内に手が擦れて痛くなるそうで、筆も使うが、筆の穂先でなく、反対側の柄 で描いたりして、自由奔放なのだ。 スズキコージさんを見出して、雑誌の挿 絵や絵本を描かせたのは、堀内誠一さんという人だったそうだ。 スズキコー ジさんは、堀内さんのところにあった数々の外国の絵本の、自由で奇抜な発想 を見て、刺激を受ける。 絵だけでは食えない頃は、肉体労働などもし、電話 や水道を止められたこともあったという。 2018年、『ドームがたり』で日本 絵本賞を受賞している。

 5年前に緑内障で左眼を失明、右眼も視野が著しく狭く、井戸の中を覗いて いるようだというが、50年間ずっと絵を描いてきたことが生きる支えになって いると語っていた。 「絵を描くこと自体が、飯を食うのと同じで骨の髄まで 染みついちゃっているというか、多分、向いているんだよ。絵描きじゃなかっ たら、もっと寂しかった。絵を作り出せる人間だったこと、その絵が僕の生活 を豊かにしてくれているんだろうと思う。絵は僕にとって、全身全霊、神様み たいに、僕のことを覆ってくれるオーラみたいな、空気みたいなものなんだろ うね。なにものにも代えがたい、揺るぎない。それは、気持の中の、自分の故 郷の原型みたいなものがあるような気がする」と。

 これを聞いて、実は私(ババコージ)も、アマチュアだけれど、文を綴るこ とが、同じような役割を果たしてくれているのかと思った。 2003年に黄斑変 性症から左眼が黄斑円孔となり、視力が弱く、右眼を頼りにやっている。 緑 内障になる恐れがあるというので、定期検診を受け、眼圧を下げる目薬を使っ て、幸い状態を維持し、もう十数年になる。

 私は、スズキコージさんも、堀内誠一さんも知らなかった。 堀内誠一さん は、1970~80年代に雑誌『アンアン』『ポパイ』など、ビジュアル雑誌の黄金 時代を築いたアートディレクターだというから、知らなかったわけだ。 たま たま手にした『暮しの手帖』5号(spring 2020/4-5月号)の、表紙のコクリ コ(ひなげし)の絵が堀内誠一さんの作品で、「堀内誠一、旅を撮る」という読 み物があった。 1932年に生れ、1987年にがんのため54歳で亡くなっている。  時代を拓くクリエイターで、絵本作家としても、数々のロングセラーの絵本を 残したが、根っからの旅好きで、28か国、延べ300以上の都市を好奇心いっぱ いに旅したという。 祭や街角、働く人、子供達など、旅で撮られたスナップ には、さまざまな人間の暮らしが映し出されている。 それが絵本の種にもな っている。 愛用したという岩波書店の手帳には、日々の出来事、旅先でのス ケッチ、スケジュール表や手書きの地図などが描かれている。 41歳のある日、 「旅するために、フランスに住もう」と決意し、妻と、当時13歳と9歳の娘 たちが合流して、数年を暮らすことになる。 その思い出を二人の娘さん、花 子さんと紅子(もみこ)さんが語っている。