「経営危機に陥ったある企業の闘い」後半2020/04/12 07:23

 残る借金は、信用金庫5億円、A社2億円、債権回収会社4億円の計11億 円となった。 4億円は債権回収会社と交渉して、1億円ディスカウントして、 3億円の返済で決着、一時的にA社がB社長に3億円貸して支払った。 B社 長の自宅をA社の取締役に就任した長男に1億円で売却、長男は信用金庫で住 宅ローンを組んだ。 最後に残っていた各地の遊休地のほか、B社長の所有の 全ての資産を売却し3億円を調達、A社から1億円を借り、これらを信用金庫 に返済、信用金庫からの借金を完済した。 B社長の借金は、A社からの6億 円だけに縮小した。

 当初、A社が借り入れをしB社長に支払った賃貸保証金5億円は、A社が本 社、工場、社宅をB社長から買い取った時点で、B社長はA社に返還しなけれ ばならないものだ。 最終的に、借入金6億円と未払保証金5億円の合計11 億円が、B社長が自社に返済すべき債務として残った。 すでにB社長の個人 資産は、全て売り尽してゼロとなっていて、収入は社長としての給与所得だけ である。 これをどう処理するかを考えるのが、吉田篤生さんの最後のタスク だ。 考えたのは債権の売却だった。 B社長は会社に対して11億円の債務を 負っているが、社長としての役員報酬ではその借入金を返済することはできな い、A社からすれば、B社長への債権は回収不能な不良債権とみることができ る。 B社長と利害関係のない第三者に譲渡する必要があるため、ある会社の 社長に買い取りを依頼したところ、B社長の報酬の範囲内で返済できる金額と して3千万円の提示があり、B社長と協議し妥当な金額と判断し、A社はその 社長に対し、11億円の債権を3千万円で売却した。 A社はこの処理で10億 7千万円の特別損失を計上、この期のA社の利益は3億7千万円だったので、 純損失7億円となったが、金融機関はB社長貸付金の早急な処理を望んでいた ので、全行が納得した。 こうして8年かけて、B社長が先代から受け継いだ 38億円の借入金は事実上、消滅したのである。

 「絶対にあきらめない、会社を潰してはいけない、継続することが最も大事 なことだ」というB社長の意志、覚悟、気力と、それを支えた吉田篤生さん、 お二人とも大変にくたびれただろうが、それを何とか二日でまとめた私も、く たびれた。 志ん生の「黄金餅」の言い立てと同じである。 読んで下さった 方々も、くたびれたかもしれない。

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