不二子皇后の発信は「怒れる市民」を動かせるか2020/05/17 07:20

 島田雅彦さんは小説『スノードロップ』で、平成の天皇があのビデオメッセ ージを発することで、大方の国民の支持を得て、令和の代替わりへの流れに持 って行ったように、不二子皇后がダークネットに強いメッセージを発信するこ とで、多くの国民の支持を得て、天皇を動かし「世直し」をしようとする姿を 描く。 天皇は政治に関われない、「天皇は国事に関する行為のみを行って国政 に関する機能を有しない」という憲法第4条の制約は、当然最後に近いところ で問題提起され、検討されている。

 不二子皇后は、「私と同じ思いを抱く潜在人口は意外に多いに違いありません。 私のこの憂いを、この憤懣を、この屈辱を、この悲しみを共有してくれる人が、 うつ病患者と同じ数だけ繭玉のような部屋に籠城しているのではないかしら。 根拠はありませんが、そう信じてみたい。この国では男は十人に一人、女は五 人に一人がうつ病にかかるそうですから、十八歳以上の人口を一億、男女半々 として、ざっと計算しただけでも一五〇〇万人が私の仲間になり得るわけです。 私のぼやき、呟きが彼らにこだましたら、堂々たる抗議の声となり、施政者を 震撼させるに充分じゃありませんか。」と言う。

 不二子皇后は、今や完全少数派になってしまった「怒れる市民」にエールを 送りたくて、ダークネットに長文の書き込みをする。

 「若者は定職を奪われ、将来の夢は早くから諦めなければならず、結婚や子 育ての余裕もなく、年金も充分にはもらえず、その年金をもらう前に飢え死に する心配もしなければなりません。三位一体化した政治家と官僚と大企業経営 者は仲間内で利益を融通してゆくことにしか興味がなく、追い詰められてゆく 若者の境遇など一顧だにせず、未来をくいつぶしています。」

 「政府は国民から完全に乖離しています。施政者はほんの一握りの国民だけ を優遇し、その他大勢をネグレクトしているのです。(中略)国民は政治的無関 心に誘導され、(中略)(政府は)白紙委任状を受け取ったつもりでやりたい放 題することができるのです。」

 「(前略)内心では全てを拒みたいのに、服従するしかない。国民は虐待され ている子どもですか? 私たちは良心の自由もあれば、恐怖と欠乏から免かれ、 平和のうちに生存する権利もあることを忘れたのですか?」