江戸川乱歩『少年探偵団』の朗読2020/09/14 06:55

6日、明智憲三郎さんが「歴史捜査家」を名乗り、「歴史探偵」を名乗らなかったのは、明智小五郎を思わせるからだろう、というのを出した。 明智小五郎で思い出した。 6月の「等々力短信」1132号「『二十四の瞳』の朗読を聴く」が反響の多かった、スマホやパソコンで聞けるNHK「らじるらじる」の朗読だが、その後、江戸川乱歩の『少年探偵団』を25回にわたって、俳優の渡辺徹が読んでいた。 第1回は9月21日の午後3時まで、最終回は10月23日の午後3時まで聴くことができる。

 私は『少年探偵団』も、『怪人二十面相』も、読んだことがなかった。 江戸川乱歩が雑誌『少年倶楽部』にシリーズ第一作『怪人二十面相』の連載を始めたのは、昭和11(1936)年だそうで、『少年探偵団』はシリーズ第二作のようだ。 シリーズは戦争で中断されたが、昭和24(1949)年に『青銅の魔人』で再開されたという。 私は小学校に入ったばかりだったから、それも読んでいない。 子供向けのリライトも読んだ記憶はないが、「怪人二十面相」や「少年探偵団」という言葉は、よく聞いていた。

 ちなみに、第一作『怪人二十面相』で「怪人二十面相」が狙うのが、資産家羽柴壮太郎が所有するロマノフ王朝の宝冠についていたダイヤだったそうだ。 物語の終盤、名探偵明智小五郎が怪人二十面相にさらわれ、心配する明智の助手、小林芳雄に、羽柴家の次男、羽柴壮二が「少年探偵団」の結成を提案する。 それが、「明智」小五郎と「羽柴」家の関係である。 だが、羽柴壮二は第三作以後には出てこないのだそうだ。

 そこで、『少年探偵団』だが、「そいつは全身、墨を塗ったような、おそろしくまっ黒なやつだということでした。」と始まる。 ある寂しい屋敷町の夜番のおじさんが、拍子木を叩いて歩いていたら、黒板塀から抜け出した真っ黒い人間のようなものが、まっ白い歯を見せてケラケラと笑った。 闇夜に船頭が隅田川を下っていると、舟のそばに白い波が立って、人が泳いでいるように見えたので、声をかけると、顔のあるへんに、まっ白い前歯が見えて、ケラケラとぶきみな声で笑い出した。 そんな「黒い魔物」の噂は、もう、東京中に広まっていたけれど、不思議にも、その正体を見きわめた人は、誰もいなかった。