北野勇作著『100文字SF』 ― 2020/09/24 07:04
8月27日の「筒井康隆さんの『現代語裏辞典』にアイディア」に書いたアイディアの提供者の第二位、約二百三十項目の北野勇作さんのお名前を、朝日新聞の読書欄の短い方(400字)の書評で見た。 9月12日(土)朝刊、北野勇作著『100文字SF』(ハヤカワ文庫JA)、評者は須藤靖東京大学教授。 ちなみにJAは、農協でなく、Japanese Authorだ。
須藤靖教授、書評を始めた頃は、本一冊の魅力をたった400文字で紹介できるはずはないと思ったが、すぐに何でも長けりゃあ良いというものではないと気づいたという。 俳句は、わずか17音でも無限の世界を記述し尽くす。 結局は自分の表現力の問題に尽きる、と。
新型コロナウイルスのために、ただでさえ閑居しているのに、気がつけば、ほとんどスイカを使っていない。 したがって、小人閑居日記も毎日、つい長く書き過ぎているなと、反省させられた。
『100文字SF』は、北野勇作さんがツィッターで発表している「ほぼ百字小説」約2千編のなかから約200編を精選し文庫化したもの。 わずか100文字で読者の頭に爽快感と深い余韻を残す著者のセンスはただ者ではない、という。
そこで、ネットを探したら、北野勇作さんの「ほぼ100字小説」をいくつか読むことができた。 百枡ぴったりに埋めるのだそうで、その推敲は、文章を一字単位でチェックすることにもなり、役立つという。 三編、紹介させてもらう。
「路地の長屋と町工場の隙間に薄暗くて狭い階段がある。二階くらいの高さでブロック塀に突き当たっているからどこにも通じていないはずだが、階段を上っていく人をたまに見かける。下ってくる人は、まだ見たことがない。」
「ぼくたちは黄昏テレビと呼んでいた。日の光が弱くなって、誰が誰だかわからなくなる時刻に映るから。四角い枠の中の小さな世界に色は無い。それもやっぱり黄昏みたいで、本当は何色なんだろうねと、よく話し合った。」
「娘とプールに行った帰り道、巨大な天使が更地に落ちていた。家に着くなり妻に娘を渡し、カメラを掴んでまた自転車に飛び乗った。どうしたのと叫ぶ妻に、天使っ、とだけ答えて自転車を漕ぎながら見上げる空は、赤。」
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