「暮の秋」と「甘藷」の句会2020/10/12 07:09

8日は『夏潮』渋谷句会、会場の渋谷区リフレッシュ氷川での開催は、1月に開いて以来だった。 コロナの影響で、3月、4月は中止、5月、6月、7月、9月は、メールによる通信句会を行っていた(2月、8月は例年休み)。

 兼題は「暮の秋」と「甘藷」、私はつぎの七句を出した。
もういくつ寝ると死ぬのか暮の秋
山茶花を嫌ふ俳人暮の秋
最後の蚊に刺されてやりぬ暮の秋
甘い物藷飴のみの敗戦後
藷飴を割ればお皿も共に割れ
議事堂の前を耕し薩摩芋
那珂湊浜一面に芋を干し

 私が選句したのは、つぎの七句。
欄干に頬杖の子や暮の秋     賢
暮の秋音をのみ込む秋田杉    由紀
後悔のぽちぽちと湧く暮の秋   耕一
藷供へありて昆陽先生碑     英
農道へ沸き出てをりぬ甘藷蔓   なな
道の駅斎藤さんの甘藷にす    由紀
掘り立ての甘藷を顔の両脇に   淳子

 私の結果は、<もういくつ寝ると死ぬのか暮の秋>を、ななさんが採ってくれて、みなさんがワハハと笑った。 主宰選ゼロ、互選はこの1票のみ、あやうくスコンクを逃れた、トホホであった。 甘藷、サツマイモというと、つい、子供の頃のことが頭にひっかかってくる。 父は、家の近くの地主さんの屋敷の中に地面を借りて、芋畑をつくっていた。

 会場での句会では、本井英主宰の講評を聴くことができるのが、有難い。 季題「暮の秋」は、説明になってしまうので、ある気分が伝わるかどうかにかかる。 「甘藷」は、どのくらい「甘藷」を知っているか、だ。 兼題の句会は、季題があって七十五年の人生を襞の細かいものにしてくれたことを感じる。

 私も採った句の、主宰選評。 <欄干に頬杖の子や暮の秋>…面白い句。橋か、お堂、橋だろう。子供の心の中に分け入ってみると、屈託があるのだろう、冷やっとした気分。情をかけすぎてはいない。 <暮の秋音をのみ込む秋田杉>…杉生(すぎふ=杉の生えた所)の美林。目はパンニングして距離感、大景を詠む。 <農道へ沸き出てをりぬ甘藷蔓>…「沸き出て」を、どうかと思う人もいるだろうが、甘藷の蔓の繁茂は独特。 <道の駅斎藤さんの甘藷にす>…旅行の浮き浮きした気分で、薩摩芋を選んでいる気楽さ。 <掘り立ての甘藷を顔の両脇に>…上手い句、面白い。写真を撮っている。自信がある。