松沢弘陽先生、福沢は杜預を読んだと推定2020/10/16 07:08

 昨日、「福沢諭吉は、杜預の『春秋経伝集解』を読んだのだろうか。」と、書いたところで、そうだと気づき、松沢弘陽先生校注の「新日本古典文学大系 明治編」『福沢諭吉集』(実は『福翁自伝』だけの収録。岩波書店、2011年2月刊)を見てみた。 福沢は『左伝』が得意で、十五巻のうち、たいがいの書生は三、四巻でしまうのを、全部通読、およそ十一たび読み返して、おもしろいところは暗記していたという部分の、『左伝』について、補注一〇に詳しく書かれていた。

 孔子が『春秋』を編んだ後、孔子と同時代の魯の人、左丘明が孔子の意とするところを伝えるため『春秋左氏伝』(『左伝』)三十巻を著した。 注釈の中では、晋の杜預の『春秋経伝集解』三十巻がまとまっており、江戸時代の『左伝』和刻本も杜預の注釈がついた『経伝集解』が主流であった。 福沢が「左伝十五巻」全篇通読十一回というのも、『春秋経伝集解』の和刻本であろうか。 『左氏伝』三十巻を「左伝十五巻」というのは『春秋経伝集解』三十巻が十五冊に編まれているのを記憶違いしたのではないか、と。 松沢弘陽先生、恐れ入りました。

 井波律子さんは、「杜預は戦況をみぬき、合理的な軍事家であると同時に、孔子が編纂した『春秋』を神秘化する従来の思潮をしりぞけ、歴史事実を満載したその解説書『左伝』にもとづいて徹底的に検証するなど、明確な方法意識をもつ突出した歴史学者であった。」と書いている。 『左伝』、松沢弘陽先生の推定によれば杜預の『春秋経伝集解』を、若き福沢がおもしろがって十一たび読み返したというのは、そういうところに響き合うものがあったのであろう。 そのことは福沢の思想形成に大きな影響を与えているに違いない。

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