明治国家像をリアルに語った坂野潤治さん亡くなる2020/10/26 07:08

 坂野(ばんの)潤治さんが、14日に亡くなったことを21日の朝日新聞朝刊で知った。 進行性胃がん、83歳だった。 「明治憲法体制の確立や日中戦争に至る過程など日本近代政治の流れを解明した歴史家で、東京大学名誉教授。」「日本近代政治史を専門とし、精密な史料分析に基づいて独自の視点を提示した。『明治憲法体制の確立』『大正政変』『近代日本の外交と政治』などの著作では、近代国家が展開していく過程を各政治勢力が影響しあうメカニズムとみなした。幕末から戦前にかけての政治の流れを描く歴史叙述も得意とした。」

 「97年に吉野作造賞を受賞した『近代日本の国家構想』は、廃藩置県から昭和の戦時体制の確立に至る間に、政治家や思想家がいかに多様な国家像を描き、実現しようと競っていたかを論じた。幕末から戦前までの約70年間にさまざまな立憲思想が広がり、明治憲法の制定から運用されていく過程をたどった『日本憲政史』では、09年の角川源義賞を受賞した。」

 「大学を退いた頃から、日中戦争に至る歴史の転換点に迫った『昭和史の決定的瞬間』といった新書などの一般向けの執筆活動も精力的に続けていた。今年9月には『明治憲法史』を出版した。」

 政治学者・御厨貴さんの話 「史料を読み込み、かつ史料に溺れることなく、自身の明治国家像を見事に描き出した。それは当時の権力者たちの対立や妥協の模様を通じて語られ、明治を単に歴史上の出来事として眺めるのではなく、まるで現代の政治を見ているかのようなリアルさがあった。」

 私は2006年12月9日、福澤諭吉協会の第100回土曜セミナーで、「幕末・維新史における議会と憲法―交詢社私擬憲法の位置づけのために―」を聴いた。 それを書いたものを、今年5月2日のブログ[昔、書いた福沢254]に出していた。

 そして本棚にあった坂野潤治さんの著書『帝国と立憲 日中戦争はなぜ防げなかったのか』(筑摩書房・2017年)を、さっそく再読し出した。