江ノ島で借りた部屋と実験所2020/11/12 06:58

 翌朝、早く起き、長い往来を通ってもう一軒の茶屋(旅屋)へ行った。 ここは実に空気がよく、海の向こうの富士山の姿が美しい、いかにも景色がよいので、永久(続)的に一部屋借りることにした。 それを決めてから、固い岩に刻んだ段々を登って、島の最高点へ行った。 この島には樹木が繁茂し、頂上にはお寺と神社があり、巡礼が大勢来る。 いくつかの神社の背後で、島は海に臨む断崖絶壁で突然終わっている。

 7月21日、再び江ノ島へ。 モースの借りた部屋の向こうに、日本人の学生4人が一部屋借りていて、朝は一生懸命勉強しているが、午後は将棋や碁をして遊ぶ。 よく笑う、気持のいい連中で、ドイツ語やフランス語を学んでおり、英語は実にしっかりしていて、全部判る。 夜二人がモースの部屋に来て、碁のやり方を教えてくれた。 この遊技には理解できなかった点も若干あり、もう一つの簡単な遊技(五並べ)はアメリカの人々にも面白かろうと思われた。

 実験所として借りた建物は、荷物も安全に到着し、ほとんど完成していた。 ドクター・マレーに借りたハンモックを吊って、蚊はいないということだったが、なかなかもって、大群が乱入してくる。 いろいろやって、最後にハンモックに寝ることをあきらめると、私のボーイ(日本人)が部屋全体にひろがるような蚊帳を持ってきたので、畳の上に寝ることにした。 やっと眠りにつくと、片手に提灯、片手に手紙と新聞紙を持って、人が部屋に入って来た。 日本人は夜、他人が睡眠しているかもしれぬということを悟らぬらしい。 日本の枕は昼寝には適しているが、慣れないと頸が痛くなるので、夜使うだけの勇気がなく、衣類をシャツに押し込んだのを枕にしている。 蚤も厄介だ。 大きな奴に噛まれると、いつまでも疼痛が残る。 私の身体には噛傷が50もある。 暑い時なので、その痛痒さがやり切れない。