渡邉恒雄さんの、小谷直道君追想文2020/12/19 07:05

 『小谷直道 遺稿・追想集』で、9月の「等々力短信」第1135号「戦争を知る政治家がいなくなった」で、取り上げた読売新聞グループ本社会長・主筆の渡邉恒雄さんの追想文をあらためて読む。 一社員である小谷直道君のことを、実によく見ていて、高く評価していたことがわかる。

 「小谷君は、重厚・誠実でかつユーモアを解する人柄から、いろいろと職場を替えながら、すべてを完璧にこなしてくれた。」 「つとに社会保障政策の権威で、その方面での広い人脈を持っていた。東京本社の論説委員、解説部長、大阪本社の編集局長から、よみうりランドに転出、代表取締役社長として一級の能力を発揮された。遊園地中心だったランドに、シルバー・ランドの機能を加え、次々に立派な老人施設を展開、その間に示したアイデアは、まことに大胆、緻密であって、行動力も抜群だった。」 「一方、総理府・厚生省・警察庁・文部省・東京都などの各種委員をこなし、中央区の顧問的立場で、この過疎区の人口増にも貢献してもいた。」

 「そうした多面的活動の中で、達筆な記者としても健筆をふるっていた。その遺稿集が出版されることになったのは、大変嬉しい。」 「難病と闘いながら、表面は平常と変わらず、厄介な仕事をてきぱきとこなし、他界する直前まで、一日も休むことがなかった。」(中略)

 「もっと長く元気でいてくれれば、よみうりランドを壮大な老人天国とするシルバー・ランド化を完成してもらいたかったが、このかけがえのない有能な人材を失って残念至極だ。」

 「敬虔なクリスチャンだった小谷君は、天国に行っても不自由することはあるまい。普通なら「安らかに眠って……」と言うところだが、小谷君には天界でも活躍し、溢れるようなインスピレーションを、我々の頭上に送り続けてくれることを祈ってやまない。」