令和二年2020年の「等々力短信」2021/01/02 07:03

 『夏潮』令和三年一月号、本井英主宰選「雑詠」の巻頭の一句、<残りページ気にしつつ読む良夜かな>の主宰選評「潮騒を聴きながら」には、こう頂いた。

「季題は「良夜」。名月がくまなく照らす夜のこと。作者は今、読書中。読み始めはやや難渋しながら読んだ本が途中から興が乗って、どんどんページが進み、当初予想していた時間よりも早く読了しそうな様子を想像した。昼間から心設けにしていたことだが、今宵は仲秋の名月。天気予報では晴れて全国的に「お月見日和」とのこと。いま読んでいる書物は、何処かで中断して夜はゆっくり「月見を」と考えていた作者だが、思わず読書のペースが上がり、この分では読み終えてから「月見」が出来そうに思えてきたのであろう。家人の話では「月」は、もう大分高く上がっているらしい。中断するか、読了するか、そんな気持ちで、ときどき「残りページ」を気にしている作者の姿が想像できた。作者が「轟亭の小人閑居日記」で有名な読書家であることを考え合わせると、いかにも静かで知的な時間が流れていることも感じられる。」

 有難い「読み」である。 だが「有名な読書家」は、恥ずかしい。 そこで令和2年コロナ禍の中、「等々力短信」や「轟亭の小人閑居日記」で取り上げた本を振り返ってみようとした。 少し始めてみると、本もあるけれど、けっこうテレビ番組も扱っているのだった。 とりあえず、「等々力短信」この一年を見ると、「本」5、「テレビ番組」3、「落語」「俳句」「展覧会」「音楽会」各1と、けっこうバラエティーに富んでいたのだった。

第1127号 2020(令和2).1.25.  お正月の「俳句日記」
第1128号 2020(令和2).2.25. 「柳田格之進」の娘
第1129号 2020(令和2).3.20. 詩人たちの国で
第1130号 2020(令和2).4.25. 武藤山治の先見性
第1131号 2020(令和2).5.25. Stay Homeに時代小説
第1132号 2020(令和2).6.25. 『二十四の瞳』の朗読を聴く
第1133号 2020(令和2).7.25. 戦国時代の日本と世界史
第1134号 2020(令和2).8.15. 無言館と絵画修復
第1135号 2020(令和2).9.25. 戦争を知る政治家がいなくなった
第1136号 2020(令和2).10.25. 民衆が生んだ自由な絵画
第1137号 2020(令和2).11.25. 心の中で「ブラボー!」
第1138号 2020(令和2).12.25. 北岡伸一著『明治維新の意味』

 書名を挙げると、
芳賀徹『桃源の水脈―東アジア詩画の比較文化史』(名古屋大学出版会)
芳賀徹『大君の使節 幕末日本人の西欧体験』(中公新書)
芳賀徹『詩の国 詩人の国』(筑摩書房)
武藤治太『武藤山治(さんじ)の先見性と彼をめぐる群像~恩師福澤諭吉の偉業を継いで~』(文芸社・2017年)
乙川優三郎『喜知次』(徳間文庫)
山本周五郎『小説 日本婦道記』「墨丸」(新潮文庫)
壺井栄『二十四の瞳』(新潮文庫)
北岡伸一『明治維新の意味』(新潮選書)