北岡伸一著『独立自尊 福沢諭吉の挑戦』2021/01/18 07:04

 12月の「等々力短信」第1138号で取り上げた北岡伸一著『明治維新の意味』(新潮選書)だが、明治初年の迅速な改革が実現した要因として、大久保利通、伊藤博文、そして福沢諭吉に注目する。 そこで福沢諭吉について言及された部分について、丁寧に見てみたいのだが、その前に次の本に触れておく。

 北岡伸一さんには、2002(平成14)年に『独立自尊 福沢諭吉の挑戦』(講談社)という本があって、2002年8月25日の「等々力短信」第918号「なぜ一万円札の顔なのか」で、福沢の全貌を知るための最適の入門書と言えると思う、と下記のように紹介していた。

 北岡さんの『独立自尊』の良いところを挙げる。 福沢が心掛けたように「平明」なのがよい。 「幸運は待ち構えているものにだけ訪れる」福沢の生涯を展望できるのがよい。 『西洋事情』『学問のすゝめ』『文明論之概略』にそれぞれ一章をあて、その内容をまとめてくれている(有名だが、たいてい読んでいない。 執筆時期と時代背景の組み合わせもよくわかる)。 『福翁自伝』に書かれなかった部分に、ふれている(幕末、福沢が幕府強化論を主張して、積極的に政治に関与し、そして絶望したことが、その後、政治との距離を強調する原因になったという指摘など興味深かった)。

 「『独立自尊』は福沢の人生そのものだった。…福沢は自らの内なる声に耳を傾けて、本当にしたいこと、本当に正しいと思うことだけをした。…自らを高く持して歩むこと、歩もうと試みることは、福沢でなくても出来ないわけではない。そういう独立自尊の精神こそ、混迷の時代に最も必要なものである。それなしには、日本は長期の停滞から抜け出せないように思う」 北岡さんは「福沢が日本をどうしたいと考えたのか、そのビジョンと方法を、そのレトリックとともに読者に伝え」ることに成功した。

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