敗戦後すぐ襲った、食糧難とインフレーション2021/02/14 07:43

 永井荷風の短編「買出し」の、おかみさんは、電車を降りて歩く途中で、ある事情で(ちょっと書きづらいのだが、一緒に二人で歩いていた婆さんと一休みして握り飯を食べていたら、婆さんが死んでいた)、買い出してきた薩摩芋と、婆さんの荷物の白米と、手早く入れかえてしまう。 その頃、薩摩芋は一貫目六、七十円、白米は一升百七、八十円まで騰貴していた。 おかみさんは、道を急ぐ間に、自転車に乗った中年の男に会う。 最近は一升二百円だって言うじゃないかというのを、百八十円で買ってきたと言って、一斗五升を五円乗せて百八十五円で売る。

 鴨下信一さんの『誰も「戦後」を覚えていない』「預金封鎖―ペイ・オフは昔からあった」の章の冒頭に、敗戦後すぐ、食糧難と同時に襲ってきたのは、とめどもないインフレーションだったとして、当時の物価のデータがある。

 昭和22年7月、政府発表の賃銀物価体系で、一般物価は戦前(昭和9~11年の平均)の65倍、米価は同32倍だった。

 露店・ヤミ市相場(昭和21年『毎日年鑑』による)
     昭和20年12月     昭和21年2月
リンゴ   3個・10円       2個・10円
汁粉    1杯・5円        1杯・10円
スルメ   1枚・3円        1枚・4円
ふかし甘藷 3個・1円        1個・1円
ネギ    15本・10円       7本・10円
大根    1本・4円        1本・8円
軍用靴下     5円          20円
ワイシャツ    80円          200円
白足袋      25円          40円