岡田裕介さんと脚本家早坂曉さん2021/04/07 07:03

 昨年11月に亡くなった東映会長の岡田裕介さんについて、朝日新聞が「エンドロール 映画人 岡田裕介」(石飛徳樹編集委員)を連載した。 慶應商学部の2年生の夏休み、父親の岡田茂さんが当時東映京都の撮影所長だったか、京都のクラブで飲んでいて、プロデューサーの逸見稔に石坂浩二と間違えられてスカウトされた。 東宝の森谷司郎監督が、庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』を映画にするのに、日比谷高校生(岡田裕介も日比谷高校卒)の庄司薫くん役でデビューする。 私も、その頃の顔は、よく憶えている。 東宝やテレビで俳優、プロデューサーをやっていたが、1988(昭和63)年39歳で東映に入社、後に東京撮影所長、常務、社長を歴任した。

 「エンドロール 映画人 岡田裕介」に、脚本家早坂曉さんが出てきた。 1970年代後半、岡田裕介さんはテレビのブロデュースに携わっていた。 旧知で麻雀仲間の早坂曉さんに、ヒット映画『人間の証明』のドラマ版の脚本を依頼したら、快諾してくれた。 高峰三枝子主演で全13話、珍しく早坂さんが一人で書いた連ドラだった。 第1話を二人で見たら、翌週の脚本は1行も書いていないと言う、早坂さんは「遅坂さん」というあだ名があった。 岡田さんが第2話を書いて、「早坂曉の名前で出しますよ」と伝えたら、「こんなのじゃ駄目だ。3時間くれ」と言って、3時間で全部書き直してきた。 この時、催促のコツを身につけた。 「カッと燃えさせればいいんだな」と。 そこから、二人の長い付き合いが始まった。

 フリープロデューサーだった岡田裕介さんは、早坂曉さんの脚本を頼りにしてきた。 佐藤純彌監督の大作『空海』、吉永小百合が死刑囚を演じた『天国の駅 HEAVEN STATION』…。

プロデューサーなのに、映画やドラマにちょろちょろ出演していたが、そろそろ俳優を引退しようと考えていた1981(昭和56)年、吉永小百合主演のドラマ『夢千代日記』に出演することになった。 脚本の早坂曉(あきら)さんに、吉永さんと会う機会を設けたので、「そのお礼に」と岡田裕介さんの役を作ってくれた。 夢千代を妊娠させて捨てる男だった。 曉(ぎょう)さんいわく「お前の新境地だぞ」って、冗談じゃないよね。

東映に入社して、90年代後半にかけて『公園通りの猫たち』『超能力者 未知への旅人』『北京原人 Who are you?』を早坂曉脚本で企画・製作した。 世間では「珍品3部作」と呼ばれているが、シネコン時代が来る前で、1996年映画の年間入場者数が史上最低の1億1千万人台に落ち込んで、映画の将来に危機感を覚えていた。 とにかくあがいて突破口を見つけなければ、と考えていた、その時に全部付き合ってくれたのが、曉(ぎょう)さんだったから、とても感謝しているんです、と。