渋沢栄一が転向し、一橋家に仕えた事情2021/05/20 07:01

5月16日の『青天を衝け』第14回「栄一と運命の主君」で、ようやく「『青天を衝け』と、渋沢栄一の転向<小人閑居日記 2021.2.23.>」に書いた下記の疑問が氷解した。

 「渋沢栄一(吉沢亮)が主人公の大河ドラマ『青天を衝(つ)け』(大森美香作)が始まった。 第一回「栄一、目覚める」で違和感を感じたのは、馬で通る一橋慶喜(草彅剛)にいきなり「渋沢栄一です」と、一橋家に仕えたい旨、申し出るところだった。 用人平岡円四郎(堤真一)はニヤニヤしていたから、打合せはしてあったようだが…。」

「馬で通る」のは、深谷の血洗島界隈ではなく、京都の松ヶ崎(現、左京区) で、「御乗切り」だった。 京都で一橋慶喜は、政争の渦中にあった。 「親が子にする「親孝行」<小人閑居日記 2021.5.9.>」に書いたように、第12回「栄一の旅立ち」で、渋沢栄一といとこの喜作は、江戸で平岡円四郎に出会っている。 一橋家が家臣に人材を集めていて、声をかけられた。 志があるなら、百姓からサムライにならないかというのだった。

横浜焼き討ち計画の中止と、殺人事件を起こして板橋宿の牢につながれている尾高長七郎への手紙で、幕吏に追われることになった栄一と喜作は、平岡円四郎の宅へ行く。 慶喜に従って、京都へ発った平岡が妻のやす(木村佳乃)に残していた一橋家の家臣だという証文のおかげで、京都まで来ることができた。 一橋家に頼らなければ死が待つだけだ、180度の転向を仲間がどう思うか悩むが、長七郎を救う手立てもあるかもしれない。 平岡に会った二人は、慶喜に拝謁して、仕官を決めたいという。 そこで、平岡が「殿は、今、大変に忙しいんだ」がと、一計を案じたのが、松ヶ崎への「御乗切り」、馬に負けないように走れ! だった。

 栄一は慶喜に、「今すでに徳川のお命は尽きてございます。もし天下にことのあったとき、あなた様が大事なお役目を果たされたいとお思いならばどうか、この渋沢をお取立てくださいませ」と言い、慶喜は「言いたいことはそれだけか」、平岡に「そなたの仕業だな」。 明日、屋敷へ、となる。

数日後、拝謁。 質素な部屋。 意見書も手渡してある、簡潔に述べよ。  「ご公儀は、積み重ねた卵のようにもろく崩れる。一橋家の勢いを上げることだ。建白を深く慮って頂きたい。大きくなって頂きたい。天下の志士が集まれば、この一橋が生き生きするに違いねぇ。幕府や大名たちからは一橋を成敗だなんて話も生まれちまうかもしれません。万が一そうなったら、やっちまいましょう!その時はこの一橋が天下を治めるのです!」

慶喜「話は終わったようだ。出るぞ」 平岡「お手間を取らせました」 慶喜「無作法は、あの時(平岡が小姓に上がって、下手下手ご飯をよそった)ほどでなかったから、驚かなかった」

平岡円四郎は、栄一に、「攘夷って考えはこの世から消える。攘夷攘夷と異人を殺したり、勝手やった奴らの尻拭いをしながら必死に国を守ろうとしてんのが、おめえらが憎んでるご公儀だ。我が殿も毎日一切合切を相手にしながら一歩も後に引かねぇ強情もんだ」「この先は一橋のために、きっちりと働けよ!」

無作法に、攘夷や大きな志を主張する若者に、何か光るもの、可能性を見出した平岡円四郎は、渋沢栄一にとって大恩人で、その恩は計り知れないというほかない。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「等々力」を漢字一字で書いて下さい?

コメント:

トラックバック