驚くべき粘り強さ、植松國雄『野菜の花写真館』 ― 2021/08/02 07:01
パソコン通信以来、「等々力短信」の会議室(フォーラム)から、このアサブロにいたるまで、ずっとお世話になっているプロバイダーの朝日ネットで、希望者に本をくれる企画があった。 そういえば昔、「等々力短信」の私家本『五の日の手紙 3』を配ってもらったことがあったっけ。 今回の本は、植松國雄著『野菜の花写真館』(敬文舎)、野菜の花にはちょっと興味があり、きれいな写真集だというので、ダメもとで申し込んでみた。
すっかり忘れていたら、朝日ネットから分厚いものが届いて、何だと開けてみると、当選したのだった。 立派な写真集である。 腰巻文のおもてに「大蒜(にんにく)、人参、大根、蒟蒻(こんにゃく)、慈姑(くわい)、牛蒡、里芋、薩摩芋 学校で教えてくれない 野菜の花 食材178種…全部新鮮 撮りたてです! 一家に一冊」、裏に「誰も挑戦しなかった日本初の写真集 この本を読むと「料理」がもっと楽しくなります 「家庭菜園」がもっとおもしろくなります 「インスタ映え」する花の写真が撮れます 「野菜の歴史」が少しわかり自慢できます ただし、この本を読んで「野菜嫌い」はなおりません」とある。
「まえがき」も「あとがき」もないところに、写真だけで勝負しようという植松國雄さんの心意気を感じる。 植松國雄さんは、1941年3月の山梨県北杜市長坂町生まれ、私と同じ昭和16年生まれだが学年は一つ上になる。 1963年日本大学藝術学部写真学科を卒業して、小学館に入社、1981年女性セブン編集長、1997年小学館取締役、二つの子会社の代表取締役を経て2007年退職。 退職後「野菜の花」の撮影を開始、本書は13年間の作品集だそうだ。
表紙の写真は、さといも(里芋)、乗っている昆虫はツチイナゴだ。 時期の限られた「野菜の花」を撮るだけで大変だろうに、驚くベきことには、178種の「野菜の花」の写真のほとんどすべてに、昆虫を写し込んでいることだ。 「野菜の花」が昆虫によって花粉が柱頭に運ばれ受粉する「虫媒花」だからなのだろうと推量するが、13年間の粘り強い撮影のご努力が想像できる。
こんにゃく(蒟蒻)の花の、奇抜な形には、びっくりした。 これには昆虫はいない。 解説に、「地下にできるいも(球茎)を加工して粉にし、それをもう一度固めて食用にします。この方法は江戸時代に水戸藩が考案し、全国にこんにゃくを売るようになりました。当時は水戸藩の専売品で、こんにゃく料理だけの料理本が発行されるほどの人気食材でした。」とあるのも、新知識だった。
ぜひ実際に見ていただきたいのだが、くわい(慈姑)、きんときまめ(金時豆)、アスパラガス(松葉独活)、えごま(荏胡麻)、クレソン(和蘭芥子)などの花が、実に可憐だ。 全体に、なばな(菜花)の系統の黄色い花が多いという感じがした。
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