情報革命・ネット社会は、まだ黎明期2021/09/23 07:09

 ときどきお会いする人で、かなり極端な意見をお持ちの人が二人いる。  どうもSNSからの情報らしい。 一人は新聞を読まず、テレビもほとんど見ないという。 それもおそらく、ごく限られたソースだけを見ているようだ。

 朝日新聞朝刊に、月に一度か「山口真一のメディア私評」というコラムがある。 1986年生まれ、国際大学GLOCOM准教授(計量経済学)、近著に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』、と紹介にある。 誰もがメディアになる時代におけるネットとメディアの在り方について論じていく、データ分析という専門を生かし、実証的な証拠、つまりエビデンスに基づきながら議論していきたい、という。

 6月11日の見出しは「ネット社会の未来は暗いか 情報革命 まだ進化の夜明け」だった。 18世紀半ばの産業革命からの産業社会は、急速な経済成長をもたらして200年以上続き、近年先進国で鈍化、終わりを迎えようとしている。 そして始まったのがネットの普及を皮切りとした情報社会。 情報社会もまた数百年続くと予想することができるから、今我々は「ネットが普及してまだ数十年しか経っていない」情報社会の黎明期にいる。

 情報社会の駆動力とも言えるデータの総量を見ると、2000年には全世界で6・2エクサバイトしかなかったデータ量が、2020年には59ゼタバイトに(ゼタはエクサの千倍)、この20年で1万倍と指数関数的に増加している。

 振り返れば、産業社会の黎明期にも、生産性の著しい向上の一方で、労働問題や公害など、多くの問題が発生した。 しかし、人類は、それらの問題を、さまざまなルールを作ったり、新たな技術を導入したりして、解決してきた。

 かつてインターネットが登場した時には、自由と民主主義のための夢のツールと期待された。 誰もが自由に発信・交流することが可能な人類総メディア時代の到来によって、オープンな意見交換による相互理解が進展し、民主主義が深化すると考えられたのである。 1990年代にはこのような期待にあふれた書籍や論文が世界中で発表され、ネットについての明るい議論が交わされた。

 2000年代以降、誹謗中傷、フェイクニュースの拡散や、同じような意見にばかり触れやすくなることから生じる社会の分断など、インターネット、SNSの様々な負の側面が顕在化した。 しかし、いま問題となっているSNSも、情報社会の変革の始まりに誕生したサービスに過ぎない。 ネットの猛威がもたらす害の大きさからみれば、今春の法改正も小さな一歩のように映るかもしれない。 しかしSNS事業者であるフェイスブックがフェイクニュース対策をした結果、フェイクニュースへの反応がピーク時の半分以下となったことが、研究で分かっている。 また、ネットテレビ局やIT業界団体が誹謗中傷の被害者の相談窓口を設けるなど、様々な関係者による対策が動き出している。

 こうした対策・仕組みを育て続けていけば、人類が情報革命の持つパワーを制御できる未来もあるはずだ。 その際には、誰もが自由に取引できる「経済の自由」を背景に産業社会が発展したように、情報社会も「表現の自由」を保障したまま発展させていくことが重要になるだろう。

 山口真一さんは「メディア私評」の初回で、そう論じていて、計量経済学専攻にも親しみを感じた私は、なるほどと思った。

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